2011.11.20 |
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独創力とは |
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竹内均氏の心に響く言葉より…
新しい発想や理論はどんな点において新しいと言われるのだろうか。
それは、みんなが見過ごしていた過去のデータを、新しい視点で洗い直したときに、
はじめて新しいアイデアが生まれるということだ。
たとえば、ダーウィンが唱えた進化論も、
言ってみれば過去に発見された生物学的な事実の集大成にすぎない。
ところが、ダーウィンが進化論を発表するまで、このような理論を誰も考えつきもしなかった。
さまざまな生物学的な事実があまりにも無関係に、しかもあちこちに散らばっていたので、
ついつい見過ごしてしまったのである。
独創性というのは、そうした誰かが見過ごしていたり、
勝手に解釈して深く追求するのをやめてしまったものなどの既成の体系を打ち破り、
断片に分解したのちに、それを新しく組み合わせて眺め直す能力だということになる。
これを一言でいうと、「異質なもの同士を結合させること」である。
そして、この「異質なもの同士を結合させること」には二つの方法がある。
一つは、従来はまったく無関係と見られていた要素を結びつけることによって新しい考えを生むこと。
もう一つは、従来は密接な関係があると考えられていた要素が、そうではないことを証明し、
新しい考えを生むこと、である。
ある建築家は、クモが二つの木の枝にまたがって巣を張っているのを見て、
吊り橋を思いついたという説がある。
また、19世紀に、イギリスで技術者として活躍したフルネルは、
現代でも活用されているシールド工法によって、テムズ川の川底にトンネルを掘った人として知られている。
彼は、この工法をフナクイムシが木の中を掘り進む前に、
一種の粘液を出して掘ったトンネルの裏張りをする様子を見て思いついたのだという。
このトンネルの中を、今でも地下鉄が走っている。
彼はフナクイムシから、100年以上も通用する技術を発見したことになる。
自動車王ヘンリー・フォードは、肉屋の前を歩いているときに
たまたま見かけた店内の作業風景からヒントを得て、流れ作業という近代的な生産方法を考えつき、
フォード王国と言われる一大産業のトップランナーとなった。
これも、つねにそのことばかり考え続けていたからこそ、日常的な何でもない風景が、
ひらめきを呼ぶヒントになったのである。
発想の原点は、そうした日常的な現象の中に隠されている。
ところが、多くの人たちは、そうした現象があまりにもありふれたものなので、
それを見ても何の新しい発想も生み出せない。
結局、世の中の現象の奥を見通し、一見無関係に見える現象に意味を与えることが独創力なのである。
『自分を生かす選択』三笠書房
業績が悪いからと、異業種の分野に進出したが、失敗してしまったという例は多くある。
例えば、建築の会社が、業界の景気が悪いからと、飲食業に進出したというような例だ。
飲食の業界にいる人たちは、自分たちも熾烈(しれつ)な競争があるから大変だと思っている。
他の業界は、簡単そうで、儲かりそうに思えるのだ。
まだ成熟していない新興の業界ならいざ知らず、
ほとんどの既存の業界には生き残りをかけた厳しい競争がある。
その中で存続するには、今自分が携わっている仕事を深く掘り、新たな発想で、
全く違った会社にしていくしかない。
「隣の芝生は青く見える」
よその業界や会社は、よく見える。
もっと頭を柔らかくして、独創力を身につけ、新たなアイデアを生み出したい。 |
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