2011.10.29 |
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人口が減る時の経営 |
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吉田隆彦氏の心に響く言葉より…
21世紀の日本では、人口が急速に減っていきます。
これに伴って、社会や経済もガラリと変わってきます。
しかし、経営者の大半はまだ、この問題が自分の会社に大きな影響を及ぼすことに気づいていません。
おそらく当面の不況を乗り切るのに精一杯で、先のことなど考えられないというのが実情でしょう。
現在の日本では、大部分の企業の経営システムが、成長・拡大型の社会を前提にして作られています。
会社の幹部の頭の中にある経営常識もまた、ほとんど同じものです。
でも、そうした方針や常識は、あと数年しか通用しません。
人口減少社会が始まると、単にお客や従業員が減るだけでなく、
社会や経済もまた従来の成長・拡大型から飽和・濃縮型へ変わっていくからです。
この転換期は、確かに危機的な時期です。
過去の延長線上で経営していこうとする経営者にとっては、とんでもない時代になるでしょう。
従来のやり方がほとんど通用しなくなります。
実をいえば、世の中が上り坂から下り坂に向かっていくのは、300年ぶりのことです。
上り坂の元禄時代から下り坂の享保の時代に向かっていく時期です。
元禄バブル期に一番成功したのが有名な紀伊国屋文左衛門とか奈良屋茂左衛門という大商人でした。
いわば江戸時代の絶頂期といえましょう。
この人たちは、大名にどんどんお金を貸して、新しい家を作りなさい、
新しい着物を買いなさいと、バブル的な経営をやったのです。
ところが、元禄バブルが終わって享保デフレの時代に入り、緊縮せざるをえない時代に入っていく。
その結果、江戸期型の経営をやっていた紀伊国屋、奈良屋などの大店は次々につぶれていったのです。
しかし、そうした経済環境の中を生き延びて、越後屋や大丸といった、新しい商人たちが台頭してきます。
例えば越後屋では「現金安売掛け値なし」という堅実な方針で、絶対貸し売りはしない、
大名にも絶対に金を貸さない、という商売を展開します。
その結果、越後屋は急成長して、後の三井財閥に成長するのです。
つまり、江戸時代でもこの転換期には、財界のリーダーもまた、
バブル型商人からデフレ時代に対応した商売人に、急激に変わっていったのです。
それだけではありません。
人口停滞期が始まるとともに、新しい外食産業が次々に生まれています。
江戸前の寿司、てんぶら、蕎麦やうどん、鰻の蒲焼、いずれもこの時代に発展した屋台産業です。
つまり、日本型外食産業の基礎はほとんどこの時期に生まれているのです。
そうした時代がいま、再び始まろうとしています。
それゆえ、従来の経営や産業を続けていきたいという経営者にとっては、明らかに危機の時代になります。
だが、新しい産業を生み出したい、新しい事業を起こしたいという人々にとっては、
絶好のビッグチャンス、いや300年に一度のメガチャンスになるのです。
『人口が減る時の経営』日本経営合理化協会出版局
人口が徐々に減ってきているのは分かってはいても、それを我がこととして捉えていない人が大多数だ。
しかし、その影響は、我々にも分かる色々な形で徐々に出てきている。
それを吉田氏はこう語る。
例えば…
人手不足を補うロボットの増大であり、外食産業で言えば、回転寿司のレーンや、
シャリ握りロボット、自動フライヤー等々。
高齢化の進行。
単身者や、母子家庭、父子家庭、の増加等による、家族の形の変化。
大都市の周辺部だけの人口が増加するという、地域人口の激変や、都心回帰。
しかし、これらのマイナス要素は、別の見方をするとプラス要因でもある。
人手不足は、ロボット産業や、コンピューターや通販の進化を促す。
また、高齢化の進行は、新たな高齢者ビジネスを生むだろうし、家族形態の変化は、
アメリカのように再婚同士の結婚というステップファミリーが増加し、そこにもビジネスの種はある。
都心回帰は、立地の変化というビックチャンスとなる。
変化を、危機として捉えるか、そこにチャンスありと考えるかで人生は変わってくる。
どんな難問も、「新たなチャンス」、と受け取れる柔らかな感性を持ちたい。 |
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