2011.10.17 |
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海の下にも都がある |
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新渡戸稲造氏の心に響く言葉より…
「世の中はそんなに甘いものじゃあない」という言葉をよく耳にする。
それを言う人は、自分は人生のなんたるかを知った、と思っているのかもしれないが、
もっともっと深入りしなければ人生は到底分からないものだろう。
人生はユリ根のようなもので、剥(は)いでも剥いでもまだ中があるようだ。
一枚でも多く剥いだ人は、それだけ人生を多く味わった人と言うべきだろう。
剥いで剥いで中心に到達しなければ人生は到底分からないものであるが、
途中まで剥いだ人はとかく中心まで剥いだかのように言う。
辛い経験をした人は人生の奥もまた辛いものであると早のみ込みをする。
今までがこうだったからこうであろう、と判断するのだろうが、それは必ずしも的を射ていない。
海の下にも都があるという信念を持つべきである。
群がる雲の陰には太陽が燦然(さんぜん)と輝いているのだ。
事にあたるとき、自分の狭い経験だけから判断しないで公平に大きく広く世間を見渡し、
達観するという態度を持ちたい。
この心掛けさえあれば、どんな逆境に陥ろうと心を頑(かたく)なにすることはないだろう。
『逆境を越えてゆく者へ』実業の日本社
誰かが何かにチャレンジしようとすると、
決まって「世の中はそんなに甘いものじゃあない」ということを言う人がいる。
自らの経験から、その難しさを強調するが、ほとんどは、
ほんの少しの経験をもとにして言っている。
もっというと、実際に経験もしないで、一般論として説教したりする人もいる。
特に年配になればなるほど、説教癖は出てきやすい。
説教する人は、相手より自分のほうが上だと思うから意見する。
上には上がいることを知らない人は、まさに、
「井の中の蛙(かわず)大海(たいかい)を知らず」の例えの通りだ。
自分の狭い経験から、説教したり、自慢している人は滑稽(こっけい)で、恥ずかしい。
雲の上には燦然と輝く太陽もあれば、海の下にも都がある。
世の中が甘くないのは事実だが、同じくらいチャンスがあるのも事実だ。
自分のしてきた経験など、人類の歴史から見たら、あまりにちっぽけなこと。
いくつになっても、まだ「駆け出し」と、謙虚な気持ちで、事にあたりたい。 |
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