2011.10.2 |
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保身の男 |
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齋藤孝氏の心に響く言葉より…
男の魅力とは何かと考えると、こんなことを思い出します。
大学のときですが、友達が、「おれ、わかったんだけど、人間のだいたいの行動というのは、
『保身』の二文字で説明できる」と言ったんです。
たしかに、そう言われてみると、ある人の行動を見ていて、
「あれは腑(ふ)に落ちないな」と思うような行動というのは、
あの人の保身行動だったんだと思うと、理解できることが多い。
保身に走っている人は、他の人を惹(ひ)きつけるセクシーさに欠けている。
やはりエッジに立っている感じというか、端っこ走っているような危なっかしい感じの男に、
女の人は惚(ほ)れると思う。
では実際、保身に走る人はどういう人なのか。
女の人に聞くと、女性はつき合っている男性を見るとき、
「ぎりぎりの場面でこの男はどうするんだろうか」と量(はか)るそうです。
細やかで気が利くというような普段の優しさよりは、
「いざというぎりぎりの土壇場」でどうするのかを見るというのですね。
だから、普段は優しくても、いざというときに腰が引けるような男はダメだと言う。
しかも、保身に走ったからうまく行くかといえば、かえってうまく行かないことのほうが多い。
責任を回避しようと立ち回っている奴のほうが、後でどっとそのツケが回ってくるものです。
ボクシングなどで受け身に立つと、かえって滅多打ちにされるのと同じです。
『人生賛歌』(齋藤孝・美輪明宏)大和書房
美輪明宏さんは、政治家なども、何かあれば、「私は知りません、秘書がやったことです」と、
いうのは保身そのもので、政治家も財界人も、いろいろな人たちの言い訳は全部保身からきている。
そして、それは自分が「これだけの値打ちしかない人間でございますよ」と、世に知らしめている、と言う。
何か事あったときに、自分を捨てる覚悟ができる人には魅力がある。
名誉も、地位も、財産も、そして命までも投げ出されてしまったら、どうにも始末に悪い。
昨今では、保身と言えば、政治家や、官僚を思い浮かべてしまう。
言い訳の上手さは天下一品だし、後で、しっぽをつかまれないような説明をするのが異常にうまい。
ぎりぎりの土壇場で、逃げるのか、それに決然として立ち向かうのか。
何事も、保身ではなく、捨て身で事にあたれるか。
保身の男には魅力がない。
いざというとき、腰が引けないような胆力を身に付けたい。 |
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