2011.9.22 |
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利行の人 |
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小林正観さんの心に響く言葉より…
仏教の中に「利行摂(りぎょうしょう)」という言葉があります。
自分の行ないによって周りの人を富み栄えさせること、周りの人に利益を与えること、です。
私たちは自分の夢や希望を持ち、何か目標をうち立て、
そこに向かって努力邁進するということを教え込まれました。
夢と希望はあくまでも自分の夢と希望であって、他人を利させる、
他人を富み栄えさせるなどという思想は、学校教育の中ではほとんど教わりませんでした。
しかし、この利行には、実は隠されたすごい効果があるのです。
自分の店を持ちたいのだけれども、十年ぐらいそのように努力をしているのだけれども、
なかなか店が持てない。
どうしたらいいのだろうか、というふうに質問してきた人がいました。
「自分の夢を叶えたい、自分の思いを叶えたいという話ですよね」と、私は苦笑いをして、
「周りの人を潤わせてあげようと考えたことがありますか」という質問をしました。
「えっ」という答えが返ってきました。
もちろん、そんなことは考えたことがないということでした。
「そうですよね。
自分の夢や希望を実現しなさい。
そのために努力して頑張りなさい、としか教え込まれてきませんでしたものね」と笑いました。
「周りの人を潤わせること、周りの人に利を与えること、そういうことを考えたら、
結果的に自分のほうにそれが戻ってくるみたいですよ」
という話をしたところ、それ以降その人は別人になりました。
明るい色の服を着て、明るい顔でとても気持ちよく笑う。
周りの人がとても明るい気持ちになるような笑顔の素敵な人になりました。
『心に響いた 珠玉のことば』KKベストセラーズ
現代は、「自分の夢を持ち、自分の夢を実現する」という言葉があふれかえっている。
一見すると、それは素晴らしく、誰もが文句のつけようのない言葉ではある。
しかし、実は、そこにはよく考えてみなければいけない大事な問題を含んでいる。
夢を実現するのは、一人ではきない。
実業の世界においても、多くの人の助けがあるからこそ、企業が存続することができる。
自分のことしか考えない人のことを、自己中心的な人というが、
「自分の夢の実現」だけしか考えていない人も同様に、ある面では利己的といわざるをえない。
その「夢の実現」は「何のため」、という問いを何回かくり返すと、その答えはでてくる。
人は、誰にも迷惑を掛けないで一生涯を生きていくということはできない生き物だ。
赤ちゃんの頃は、オムツから食事まで、なんでも親にやってもらう。
大きくなっても、誰かしらにお世話になっている。
今、生きていられるのは、人様のお陰、と分かったとき、そこに感謝の気持ちが生まれる。
だからこそ、周りの人を潤わせること、利を与えること、
喜ばせることを、自分のことより先に実行したほうがいい。
まわりに利を与える、笑顔の素敵な、利行の人でありたい。 |
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