2011.9.16 |
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押さば引け |
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中野東禅師の心に響く言葉より…
幕末、日本一の剣豪とうたわれた山岡鉄舟が、友人の「清水の次郎長」こと山本長五郎に、
「出入り(けんか)で負けない秘訣」をたずねたことがあります。
次郎長は、
「まずは相手の強さをはかります。
刀を抜いて相手と切っ先を合わせたときに、ちょっと押してみるんです。
そのときにすぐに押し返してくるのは弱い奴です。
冷静さを失っているから、即座にぶった切ってしまいます。
けれど、押してやると押されるままに引っ込んでいく奴がいる。
こんな奴は強い。
だから、なりふりかまわずにげちまいます」
と答えました。
「丈夫の気を負って、小児の心を抱く」(釈宗演)
「丈夫」とは「勇気のある男」のこと。
「勇気ある男の気力を持ちながらも、子どものような純な心を持って行動せよ」ということです。
これは、修羅場での立ち回りの極意です。
大きな仕事を任せられ、立ち行かなくなったときなどはまさに修羅場です。
冷静を装っても頭の中はカッカして「のぼせ状態」になります。
この「のぼせ」を無理にしずめることはできません。
のぼせの状態で考えるしかないのです。
そんなときは、「進む」だけでなく、「退く」ことも大切だと考えることです。
子どものような純真さとは、「無理なものは無理」「怖いものは怖い」「強いものは強い」と、
こだわりをもたずに自分の心に正直になれることです。
『名僧の一言』知的生き方文庫
柔道には、「押さば引け 引かば押せ」という言葉がある。
これが、柔道の「自然体」という極意を表しているとも言われる。
テレビの討論番組などで議論を吹っかけられ、それに対して、顔を真っ赤にして大声で反論する人がいる。
これは、押されたときに、押し返している状態だ。
変化自在、自然体で、こだわりのない人は、押されたらすっと下がる。
それが、少し損することだなと思っても、あえて損することを厭(いと)わない。
本当に勇気ある人は、引く事を知っている人。
時には、無理なものは無理と、退くことも大切だ。 |
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