2011.7.27 |
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パスポート・フォア・ヘブン |
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石田禮助氏の心に響く言葉より…
石田禮助(れいすけ)は、数え78歳で国鉄(現JR)総裁職を引き受けた。
従業員数46万。
政府の指揮監督、国会の監督と手枷足枷をはめられての仕事である。
給与も運賃も自ら決めることができない。
経営サイドに当事者能力がまるで与えられていない。
これで、いったい企業なのか。
加えて、巨大な労働組合の壁がある。
これでは誰が成ろうとうまく行くはずはない。
末路はすべて不遇。
花道にもならないポストであった。
石田禮助は、なぜその歳で「乃公(だいこう)出でずんば」の心境になったのか。
石田は、
「私の信念は何をするにも神がついていなければならぬということだ。
それには正義の精神が必要だと思う。
こんどもきっと神様がついてくれる。
そういう信念で欲得なく、サービス・アンド・サクリファイスでやるつもりだ」
商売に徹して生きた後は、「パブリック・サービス」。
世の中のために尽くす。
そこではじめて天国へ行ける。
石田は、
「これでパスポート・フォア・ヘブン(天国への旅券)を与えられた」
とも言った。
新聞記者たちは、手腕についても未知数だが、まず年齢を気にした。
これに対して石田は胸をはって応えた。
「体に自信はある。気持はヤング・ソルジャーだ」
「鬼軍曹か」という声が入ると、すかさず、
「いや、心はウォーム・ハートじゃよ」
『粗にして野だが卑ではない』(城山三郎)文藝春秋
サービス・アンド・サクリファイスとは、奉仕と自己犠牲のことだ。
世のため人のために生きるという、利他の精神。
三井物産に35年在職した石田は、海外勤務が実に28年であり、
海外の合理主義が身に滲(し)みこんでいたという。
合理主義に徹した人の発言だけに、損得を超えた発言が心に響く。
商売に関わっているときは、儲けの鬼に徹し、そして残りの人生は、公に尽くすことに徹する。
あまりにも鮮やかな人生だ。
世のため人のために尽くす人には、パスポート・フォア・ヘブンが与えられる。 |
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