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2011.7.10

グッバイ ウエーブ

ANA元CA、三枝理恵子さんの心に響く言葉より…

それはまだB(ボーイング)737型機が飛び始めた(1973年)頃のお話です。

沖縄空港支店整備課に配属されたK君は、
先輩整備士Mさんがいつも出発する飛行機に向かって最後まで手を振っていることに気づきました。

そこで、
「Mさんはどうしていつも出発する飛行機に手を振っているんですか?」
と聞いたのです。
するとMさんは次のように答えました。

「おう。あれか。
あれはな、俺、もともと沖縄の出身なんだよ。
だから、お客様がこんな遠い沖縄まで高いお金を出して、青い海と輝く太陽を楽しみに来てくれて、
ありがたいなって思うし、真っ黒に日焼けして帰っていく姿を見ると『よかったですね、
来たかいがありましたね』って、思ってうれしくなる。

反対に、台風や雨の日が続いてしまって、真っ白い肌のまま帰っていくお客様を見ると申し訳なくて、
『ぜひもう一度、すばらしい沖縄を見に来てください』って思う。

だから、楽しく過ごしてくださった方はもちろん、ちょっと残念な思いをした方にも、
沖縄に行ってよかったねって、楽しい思い出になったねって、
思ってほしくて、その気持を伝えたくて手を振っているんだ。

時々、機内のお客様が手を振り返してくれるのが見えると、すごくうれしいんだよな。
俺たちが整備した飛行機に乗っているお客様から手を振ってもらえるなんて、幸せなことだと思わないか?」

Mさんの話に感動したK君は、この時以来、Mさんと同じ気持で手を振って見送るようになりました。
その後、このお見送りは沖縄空港支店整備課にとどまらず、どんどん広まっていきました。

そしていつしか「Good-bye Wave」と呼ばれるようになり、世界中の空港で当たり前の光景となったのです。

炎天下の日も、寒い冬の日も、たとえ台風の日であっても、姿勢を正して、手を振り続ける整備士たち。
実は、手を振っているのは、整備士だけではありません。
機内の清掃を担当している係員たちが一列になってお見送りをしている空港もあります。

今でこそ日常の何気ない光景なのですが、毎回、手を振る姿に胸が熱くなります。

「ありがとうございます。行ってまいります。私たちにお任せください」
手を振り返しながら、しっかりバトンを受け取り、私たち乗務員は飛び立ちます。

『空の上で本当にあった心温まる物語』あさ出版


「手を振る」という行為は、何故か人の心を熱くする。
先のカンヌ国際広告祭で見事金賞を受賞した、「九州新幹線全線開業 」のCM。

人々の手を振るシーンだけで構成されているこのCMは、何度見ても涙が溢れる。
飛び上がって両手を振る人。
ちぎれんばかりに旗を振る人。
満面の笑顔で手を振る人…

そして…
「あの日、手を振ってくれてありがとう。笑ってくれて、ありがとう。一つになってくれて、ありがとう。」
と、ナレーション。

「行ってらっしゃい」、「元気でね」の気持を伝えるとき。
そして、誰かを応援するとき。
体全体で、満面の笑顔で、ちぎれんばかりに手を振って、熱い気持を伝える。

「Good-bye Wave」
手を振ると、皆が一つになれる。



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