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2011.7.1

本質的な魅力を高める努力を

一倉定氏の心に響く言葉より…

事業経営とは「市場活動」である。
多くの人は、経営とは“内部管理”のことと思っている。
事業というものは、そこから収益をあげなければならないのだ。

内部管理からは収益は生まれない。
収益をあげることができるのは、市場しかないことを考えていただきたいのである。

ある大企業から「役員むけに販売促進に関する話をしてもらいたい」という依頼を受けた。

私の出だしの言葉は、
「あなた方の会社の商品を、お客様が買ってくださらなければ、あなた方の会社はつぶれてしまう」
というものであった。

話終わって、役員の方々のご感想をお伺いしたところ、大部分の方が、
「出だしの私の言葉は“晴天の霹靂(へきれき)”だった」とのことであった。

天動説のために、どんなことが起こるのだろうか。
天動説の考え方は、「世の中は我社を中心にして回っている」というのである。
だから、我社は動く必要がない。
世の中の動きや、お客様の要求の変化、さらにはライバル会社の状況などにはまったく関心がない。

アサヒビールを再建した樋口社長は、
「私の考えていることは、売上高を多くすることではない。
占有率を高めることでもない。
利益を増大させることでもない。
『どうやったらお客様の満足を得られるか』ということだけです」

『経営の思いがけないコツ』日本経営合理化協会出版局


静岡県の藤枝を中心に県内に何店かの居酒屋を経営する、
「岡むら浪漫」という大繁盛の会社がある。
この店の特徴は、場所がわかりにくいところにあり、看板もなく、メニューに価格が書いてない、等々、
およそ一般の居酒屋の常識を超えているところだ。

普通は飲食店に限らず、小売の店舗でも、必死で、わかりやすい良い立地を探し、
看板も目立つように立て、如何に安いかとアピールするために価格を明示し、
広告にもそれを載せる。
ところが、この会社は全て逆をいっている。

お金をかけチラシを配り、安売りすれば一時はお客様は来店してくれるかもしれない。
しかしたいていは、せっかく高いお金をかけてお客様を呼び寄せたのに、
サービスや商品に満足せず、二度と来店してくれない客様を量産しているのが現状だ。

販売促進や割引、目立つ看板、いい立地には、麻薬のような魔力がある。
店の本質的な魅力とは関わりなく、お客様が一度は来店してしまうからだ。

悪い立地で、看板なし、メニュー価格なし、と自らの退路を断ってしまったとき、
どれだけのお客様が来てくれるかを一度考えてみる必要がある。
いかに、日頃の営業が、本質的な魅力を高めることではなく、
小手先の集客の技術に走っていたかを。

事業経営の本質は、「お客様の満足にあり」。
この言葉を胸に刻み、自らの魅力を高める努力をしていきたい。



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