2011.6.25 |
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現実の延長線上 |
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ユニクロの創業者、柳井正氏の心に響く言葉より…
感銘を受けた経営者がいる。
それが藤田田さん。
マクドナルドの創業者レイ・クロック氏と交渉し、権利を得て、日本マクドナルドを創業した経営者です。
藤田さんに学んだのは、「現実の延長線上にゴールを設定しない」こと。
マクドナルドを日本に持ってくる時、藤田さんは評論家や飲食業界の人たちから、
さんざん「失敗する」と言われたという。
次のような声が圧倒的だった。
「日本人は米と魚を食べる民族だ。パンと肉のハンバーガーなんて誰も食べない」
「味を日本人好みにしなくっちゃだめだ」
だが、藤田さんは「それは評論家のたわごとだ」と切って捨てた。
藤田さんはそういう評論家たちの声を「それは現実の延長線上の考え方だ」と思っていたに違いない。
さて、マクドナルドのハンバーガーを「ファーストフード」と呼ぶことはみなさん、ご存知だろう。
「いつでも、どこでも、誰でも食べられる」食べ物なので、ファーストフードと呼ばれている。
しかし、たいていの方はファーストフードという言葉からは、
安くて手軽な食事というイメージを受けるのではないだろうか。
実は藤田さんが日本に導入して儲かると考えたのは、価格がリーズナブルなこともさることながら、
「いつでも」と「誰でも」という、ふたつの要素に秀でた商品だと感じたからだという。
ハンバーガーショップがこれほど多くできるまで、
日本にあった飲食店とは食堂、料理屋、レストランがほとんどだった。
いずれも「食事」を出す店である。
つまり、それまでの日本の飲食店は昼食、夕食という、ふたつの時間帯だけがピークで、
それ以外の時間はほぼ客が入らなかった。
ところが、ハンバーガーショップには開店から閉店まで、絶え間なく人がやってくる。
しかも、老若男女が気軽に入ってくる。
「いつでも」「誰でも」食べられるのがファーストフードなのだ。
藤田さんがやったことは飲食業界のマーケットを奪ったのではない。
「ファーストフード」という新しいマーケットを創造したのだ。
私がやろうとしていたベーシックカジュアルは
洋服の業界におけるファーストフードに例えられる商品だと思ったのである。
流行にとらわれず、いつでもどこでも着られる服、誰もが着られる服、お客様が望む場面で使える服…
日本人が食べたことのないハンバーガーを定着させることに比べれば、服のほうがはるかに簡単だと思った。
『柳井正の希望を持とう』朝日新書
マクドナルドの藤田田(でん)氏に学んだのは、ユニクロの柳井氏だけではない。
孫正義氏は、高校生の頃、藤田田氏の言葉に感銘を受け、何度も門前払いを受けながらも、
面会を果たし、「これからはコンピューターの時代だ」とのアドバイスを受けたという。
新たな事業を立ち上げようとすると、たいてい、多くの専門家や、業界の人たちから反対を受ける。
専門家の人たちは、その業界を熟知しているがために、
その延長線の枠から外れたことは失敗すると見なすのだ。
多くの人は、今の延長線上でしか考えることはできない。
誰もが知らない、新たな創造や、まったく新しい表現は、ほとんど理解されることはない。
しかし、今までの延長線上では、生き延びることはできない。
新たなマーケットを作る人には、競争相手は存在しない。
時代の変化と、消費者の選択こそが競争相手だからだ。
どんな小さな世界でもいいから、
「別の新たなマーケットを創造する」、くらいの気概を持って仕事に没入してみたい。 |
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