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2011.6.22

百歩先を見て事を行うものが成功する

阪急グループの創業者、小林一三氏の心に響く言葉より…

無から有を生み出すのが独創であり、それを形にするのがベンチャー企業家なら、
大衆の夢を結ぶことで娯楽・サービス業の礎を築いた小林一三は、
近代日本が生んだ大先達と言えるだろう。

統制を憎み、自由市場経済と自立精神の重要性を説いたアイデアマンの発想は、
日本が「経済敗戦」にあえぐ今、もっとも身にしみる箴言(しんげん)として企業人に迫る。

宝塚歌劇団のもとになる西洋オペラは三味線文化の当時、まったく顧みられていなかった。
しかし、小林は違った。
すでに学校の音楽教育にオルガンが採用されていたからだ。
「やがて日本の音楽は変わる」とにらむ。

折も折、東京の帝劇で歌舞伎の余興としてオペラが上演された。
歌舞伎目当ての観客は独特の歌い方にあっけにとられ、笑いだし、ヤジを飛ばす。
だが、若者が大勢いる三階席に上がった小林が見た光景は違った。
「面白い、素晴らしい」。
彼らの目は輝き、新しい音楽に興奮を隠さない。

これが、少女歌劇団を作るきっかけとなる。
ただ、当初は純粋なオペラを避け、桃太郎から題材を得た「ドンブラコ」など、親しみやすい出し物にした。
結果は大成功。
小林のアイデアの強みはここにある。
一部の前衛ではなく、大衆の需要に焦点を合わせたのだ。

「千里先の見える人は世の中に受け入れられない。
現状維持では落後する。
百歩先を見て事を行うものが成功する」

『無から始めた男たち』日本経済新聞社


小林一三は、大阪梅田にある阪急百貨店の大食堂で、
年配客を中心に今でも人気の定番商品、「阪急カレー」を開発した。
当時まだ一般には高根の花だったカレーライスを、
福神漬け付き20銭という破格の値段にしたところ大ヒットしたという。

成功した名経営者は、実に細かいところに気がつき、同時に細部にこだわってアイデアを出す。
会社の大きな方針を決めたら、後は全部よきに計らえとばかり、部下に任しているのではない。

商品が売れるか売れないか、事業が成功するかどうかは、
実はほんの些細な違いで明暗を分けることがある。
同じ商品でも、パッケージやネーミングや価格を変えただけで売れるものはいくつもある。
早すぎても売れないし、遅すぎても売れない。

時の人の心を掴み、気持に訴えかけた商品だけがヒットする。
千歩先ではなく、百歩先を見て、世の中に受けいれられる商品や事業を開発したい。



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