2011.4.17 |
|
自分を支えるよりどころ |
|
日本電産社長の永守重信氏の心に響く言葉より…
「大震災で多くの人が犠牲になりました。
取り返しがつきません。
親族を亡くされた方々は本当にお気の毒です。
それと比べたら、僕らが、普段えらいこっちゃと思うようなことは、挽回できる」
「創業して銀行からカネを借りようとしたら、担保が無い。
生命保険に入れと言うんです。
それを担保にしたので、会社をつぶしたら自殺して返さなくてはならん。
京都の渡月橋がある嵐山を死に場所と決めていました」
「時々、会社が苦しくなると、そこに見に行くわけです。
実際、不渡り手形をつかんでつぶれそうになった。
でも、ここで飛び降りて死ぬのかと思うと、ぞっとした。
怖いと思ううちは、自殺はできないものです。
だから頑張った。
人間、何か怖いと思うものが心の中にないといかんね」
「沈み込む谷が深ければ、登る山は高くなる。
僕の人生は、その繰り返しだ。
前半が悪かったから、これからますますよくなるはずや」
日本電産の本社ビル1階ロビーに、粗末なプレハブの小屋が鎮座している。
創業時の苦労をしのぶ記念物だ。
「いま苦しくなると、社長室から1階に降りて小屋を見に行く。
すると窮地に追い込まれた昔を思い出して震え上がる。
創業したころはカネはあらへん、人はおらへん。
何も無いわけや。
もしもの時は、本当につぶれてしまう。
ものの5分もしないうちに、何のこれしきのこと、という思いがわいてくる」
ハードワークで売る元気印の経営者から意外な言葉が。
「人間は弱いんですよ。ものすごく強そうに見えても、たかが知れてます。
心がすさみ、暗くなる時に、何で自分を支えるのか。
何か持っていないといかん。
僕の場合は、創業小屋と、京都・八瀬の九頭竜大社やね」
「政府や東京電力は想定外とか言っているが、我々がそんなこと言っていたら、つぶれてる。
想定外なんて言い訳したらあかん」
「経営者は自分で自分を動機づけしなくてはいけないんです」
「世の中は『あいつは元日以外は働いているらしい、あほと違うか』と思っているかもしれないが、
それくらい働かないと、こうはなりません。
京セラの稲盛和夫さんだって、そうでしょう」
「若いころ楽しくやって、今になって『あんたはいいな』と言う人がいる。
人生を振り返って後悔するのが一番不幸だ。
平穏な一生はサインカーブの波が小さいだけや。
これもリスクの多い人生も、締めてみればプラスとマイナスの収支は同じゼロ。
どっちを選ぶかの違いやね」
『日経新聞』4月16日(夕刊)
永守氏は、連結で年間売上高1兆円を目標に掲げ、世界を飛び回る猛烈経営者。
永守氏ほどの人物でも、苦しくなると見に行くところがあるという。
創業の頃の粗末なプレハブ小屋だ。
我々は、時が過ぎ、日常に流されると、原点を忘れる。
創業者は、創業の頃の原点を、二代目、三代目は会社に入社したその日のことを。
心が暗くなり、辛くなったとき、自分を支えるよりどころを持つことは重要だ。
永守氏のよりどころは、ひとつは創業の頃の原点を忘れないことであり、もうひとつは宗教心だという。
宗教心とは、宗教に頼るということではない。
なにか大きな力にゆだねる、恐れをいだく、という畏敬の念と、敬虔(けいけん)な気持を持つこと。
日常の辛くて厳しいと感じる事柄も、大震災で被災された方々の苦労と比べたら何ほどのこともない。
人生を振り返って後悔しないよう、今を精一杯生き抜きたい。 |
|
|