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2011.4.6

待つこと

舞鶴市の柿本良枝さんの心に響く言葉より…

娘を亡くして二週間ぐらいの頃、この世で一番不幸で、悲しみの真っ只中の時でした。

私の仕事は美容師ですが、店をだれかに譲ろうと、ある人に頼んでいたのです。

そんなとき、お客様の岡村様から電話をいただきました。
「奥さん、あなたが仕事をする気持になるまで待ちますから、パーマをお願いしますよ」

と言ってくださいました。
私は目から熱い涙がポタポタと…。

岡村様も娘さんを亡くされていたのです。
「私は三年目です。あなたの悲しみ、苦しみはよくわかりますよ」
とも言ってくださいました。

その時、私は一番不幸だと思っていたのですが、
多くの方が苦しみ、悲しみを乗り越えておられることに気づきました。

それから、心の中で何かが動きはじめました。
あの電話から五年になりますが、いま温かいお客様に守られ、頑張っています。

(京都府舞鶴市 柿本良枝 61歳)
『涙が出るほどいい話 第8集』河出書房新社


人は、あまりの悲しみや、辛いことに出会うと、何もする気がなくなってしまう。
そんなときは、まわりからいくら励まされようが、どんなにやさしい言葉をかけられようが、行動できない。

「あなたに元気が戻るまで待ちますよ」
慈愛にみちた素敵な言葉だ…

エネルギーは自分でしかチャージできない。
周囲の人はそれをじっと黙って見守るだけ。

悲しみに打ちひしがれている人に必要なのは、
「激励ではなく、共感」、「行動を促すことではなく、待つこと」。

「待つ」時間が、すべてを癒(いや)してくれる。



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