2011.2.15 |
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負けるが勝ち |
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清田製作所の清田茂男氏の心に響く言葉より…
大手企業が「こんなもの作れないか」と列をなす、下町の小さな町工場。
清田製作所は、半導体検査装置プローブなど「世界唯一」を開発してきた。
社長の清田茂男は、赤字になろうと時間がかかろうと、依頼を受ける。
局地戦で一歩退く「負けるが勝ち」を貫き、得られた信頼で大事を成した。
打ち合わせ、仕事の依頼、交渉ごと。
相手との言葉のやりとりは、あらゆる場面に発生するが、
絶対に自分が言い負けたことにならないように強弁する人は結構いる。
相手のいい分を受け入れる時ですら、自分が高みに立とうとする。
そんな「局地戦の勝利」にこだわる人に大きな仕事はできないと、清田茂男は考えている。
言った言わないの場面での優位、目先の利益。
そんなものに清田は関心がない。
清田には、「世のため人のため。世の中にないものを作って社会に貢献する」という、
はっきりした「生きる軸」があるのだ。
これまでの仕事はすべてこの軸の上にあり、信念と言っていい。
お祖母ちゃん子だった清田は、
祖母の「崖をよじ登ってでも世のために尽くせ」という言葉を、肌身離さず生きてきた。
それに乗った仕事なら局地戦など関係なし、少々譲っても自分が努力すれば周囲の力も得られるし、
最後は世のためになる製品を作ることができる。
言い換えれば、軸の上にさえいれば一歩退いたところで二歩三歩と進むことができると、
疑いなく思っているのだ。
明確な軸を持っての「負けるが勝ち」で得られるものは、周りからの信頼だ。
局地戦で四の五の言う人は、軸がないから譲る判断もできないし、何より自分に自信がない。
だから局地戦の負けが自己否定につながると焦って、自分を大きく見せたがる。
『WEDGE』2011年2月号より
清田茂男氏は現在83歳。
清田製作所は、従業員13人の小所帯だが、大手の下請けはせず、
世界でここにしかできない、自社製品を開発しているスーパー町工場だ。
その場その場の局地戦で、勝ち負けに拘泥(こうでい)する人は多い。
自分のプライドやメンツにこだわり、本質とは関係ないところで怒ってしまったりする人だ。
「重箱の隅をつつく」という言葉があるが、本当はそれとは反対に、
片目はつぶって、もう片方の目は薄目で見るくらいでちょうどいい。
どこでも、自分が勝たなければならない、負けてはいけないと思っている人の人生は、
あまりに窮屈(きゅうくつ)だ。
人は、少し損をして生きるくらいでちょうどいい。
負けるが勝ちで生きる人の方が、もっと楽に生きられる。 |
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