2011.1.10 |
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盲点力 |
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心理学者の多湖輝氏の心に響く言葉より…
人の気づかぬところを見る力を「盲点力(もうてんりょく)」と名付けました。
誰も気づかない思いつきやプランを組み立てる力のように思われそうです。
でも、そんな瞬間的なことではなくて、一人の人間の生き方と大きく関わってくるのです。
ビーグル号に乗り込んで、5年間かけて世界を一周し、
『進化論』を著したダーウィンはミミズの研究家としても偉大な仕事をしています。
ミミズは誰でも知っている生きものです。
そのミミズが、土を耕して豊かにする生きものだということは、おそらくみなさんもご存知でしょう。
そのことを、科学的に初めて立証したのはダーウィンです。
彼は何をしたか?
実に気の長い「実験」をしました。
ミミズが住む、小石が混じった砂っぽい土の上に、石灰石を置いて、そのまま放っておいたのです。
29年後に、ダーウィンは石灰石を置いた場所を掘り起こしました。
周囲は一面の牧草地になっていました。
そして、ダーウィンがざっくりとさしたスコップは、29年前に敷いた石灰石を掘り当てます。
その深さがおよそ17センチ。
土は空から降ってきません。
勝手に盛り上がったりはしません。
ということは、小石混じりの砂っぽい土が、ミミズに耕されてどんどん沈み、
黒い土に変わっていったということです。
ダーウィンはそれを確かめるために、29年間、待ったのです。
日本人も昔から、ミミズは土を耕す生きものだということをわかっていたのです。
ただ、それを科学的に証明しなかっただけのことです。
「盲点力」というのは、特別なものではありません。
誰でもわかっていること、指摘されればすぐに納得することを、誰もが見逃しているから盲点なのでしょう。
自分の思い込みや、世間の習慣をもう一度見直す気持。
そういう気持を失わなければ、いまの自分の人生にも盲点があることに、きっと気がつくはずです。
『盲点力』新潮社
多湖氏は、盲点力について興味深い話を書いている。
ある公立中学校の校長先生の話だ。
その中学の図書館には約8000冊の本が備わっていたそうだ。
しかし、調べた結果、およそ数千冊の本はほとんど利用されていないことがわかった。
そこで、その校長は、自分で新たに本を買い揃え、それを校長室に図書コーナーを作った。
その数が300冊。
しかし、貸し出し実績では校長室の300冊のほうが、図書館の8000冊よりはるかに多かったという。
その理由は言うまでもなく、「品揃え」にある。
現代の若者たちに支持されている作家たちの本を揃えたり、マンガも置いたという。
「盲点力」より引用
盲点は色々なところにある。
学校の図書館は、校長室のコーナーとは比較できないほどの広いスペースを使い、お金も使っている。
もちろん、貸出率だけで比較するのは乱暴な話だし、年に一冊も貸し出しがない本でも、
勉強のために置く必要があるのかもしれない。
それでもなお、このインターネットの時代には、もっと別の考え方があってもいい。
生徒に本を読む習慣をつけさせるという意味においては、
校長室の小さな図書コーナーも貴重な役割を果たしているからだ。
表と裏を逆に考えてみたり、長い目で考えてみたり、枝葉ではなくもっと本質で考えてみたり、
という思考方法を使うと盲点が見えてくる。
問題の解決に行き詰ったり、壁に突き当ってしまったとき、盲点を見つけ出し、壁を乗り越えたい。 |
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