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2011.1.8

親の期待

致知出版社長の藤尾秀昭氏の心に響く言葉より…

「娘の霊にささぐ」という一文があります。

東京家庭教育研究所を創設した小林謙策氏(故人)の記したものです。

小林さんが家庭における子どもの教育がいかに大切かを身にしみて感じたのは昭和30年6月、
ただ一人の娘に突然、自殺されたときからです。

小林さんは長野で中学校の校長をしていました。
人さまの大切な子どもをあずかって教育しなければならない立場の者が、
自分の娘の教育さえ満足にできなかったのはなぜか。
19年間の娘に対する教育のどこが間違っていたのか。

平和で楽しかったはずの家庭に突然おそった悲しみ、苦しみが厳しく小林さんを反省させました。
「私は家庭における子どもの育て方に大変な間違いを犯しておりました」
と小林さんはいいます。

自身が勝気で負けず嫌いだったから、娘に対しても、小さい時から「えらくなれ」といって育ててきた。
大きくなると、さらにその上に「人よりえらくなれ」といった。

「娘は小学校、中学校、高等学校までは、自分の思い通りに伸びていったが、
東京の大学に行ってからは、そうはいきませんでした。
あらゆる努力をしても、自分よりすぐれているものが幾多(いくた)あることを知ったとき、
もはやわが人生はこれまでと、生きる望みを失い、
新宿発小田急行の急行電車に投身自殺をしてしまったのです」

遺された手紙には
「両親の期待にそうことができなくなりました。
人生を逃避することは卑怯(ひきょう)ですが、
いまの私にはこれよりほかに道はありません」
と書かれ、さらに、

「お母さん、ほんとうにお世話さまでした。
いま私はお母さんに一目会いたい。
お母さんの胸に飛びつきたい。
お母さん、さようなら」
と書いてありました。

「それを読んだ妻は気も狂わんばかりに子どもの名前を呼び続け、
たとえ一時間でもよい、この手で看病してやりたかった…と泣きわめくのでした」

小林さんはいいます。
考えてみれば、子どもは順調に成長してゆけば、誰でも「えれくなりたい」と思うもの。

這(は)えば立ちたくなり、立てば歩きたくなり、歩けば飛びたくなる。
これが子どもの自然の姿です。

子どもは無限の可能性を持って伸びようとしています。
「それなのに自分は愚かにも娘に、『人よりえらくなれ』といい続けてきた。

“自分の最善をつくしなさい”
だけで、娘は十分伸びることができたはずです。
私は娘の死によって、家庭教育の重要性を痛感いたしました。

坂村真民さんの詩があります。
「小さい花でいいのだ
人にほめられるような大きな美しい花ではなく
だれからも足をとめて見られなくてもいい
本当の自分自身の花を咲かせたらいいのだ
それを神さま仏さまに見てもらえればいいのだ」

『心に響く言葉』致知出版

心理学の交流分析に「スタンプ収集」という言葉がある。
本当は怒りたいのに、我慢してニコニコしてしまったり、
拒否したいのに、笑って「やりますよ」などと返事をしてしまったりと、
大小の様々な、嫌な感情を押し殺して、ため込んでしまうことを言う。

ためこみやすいタイプは、親の言うことを反発もしないでよく聞く、「いい子」だと言われる子どもに多い。

スタンプがある時に満杯になると、一気に感情が爆発する。
怒りや暴力として外に出たり、あるいは自分を傷つけたり、引きこもったりと内に向く状態である。

キレる、というのもそうだ。
あんな従順で素直だった子どもが、なぜ金属バットで暴れたのか、という話だ。

親が子どもに期待するのは当たり前の感情だ。
しかし、子どもが嫌がっているのに、そのサインを見落として上から押さえつけ続けると、
スタンプ収集になってしまう。
反発できる子どもはいいが、そうでない心優しい子どもはなんとかして、親の期待にこたえようとする。

これは、子どもだけの話ではなく、大人でも同じだ。
嫌なものは断ったり、それを受け取らない勇気も必要だ。
我慢してやりつづけると、やがて我慢の限界がくる。
そして、時には心を休ませることも大切だ。

花には大きな花もあれば、小さな花もあり、名も知れぬ雑草として咲く花もある。
しかし、どんな花でも、花は咲くだけで美しい。

無理して大きな花を咲かせようとするのではなく、
小さくてもいいから自分の花を、せい一杯咲かせたい。



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