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2011.1.2

物の見方と考え方

安岡正篤師の心に響く言葉より…

物の考え方にというものに三つの原理がある。
まずこれを知ることです。

その第一に、物を目先で見るのと、長い目でみるのと両方あるということ。
目先で見るのと、長い目でみるのと、非常に違う。
どうかすると結論が逆になる。
ある人は非常に長い目で見る議論をしておる。
ある者は目先で見る議論をしておる。
これでは話が合いっこないですね。

しかし、我々は目先ももとより大事であるけども、
原則としては、やはりできるだけ長い目で物を見るということを尊重しなければならない。

目先を考えるということは、うまくやったつもりでも、大抵の場合じきに行き詰る。
物を目先で考えないで、長い目で見るということ、これを一つの原則として、
我々は心得ておかなければならなん。

その次に、物を一面的に見る見方と、多面的あるいは全面的に見る方とがある。
物を一面的に見るのと、多面的あるいは全面的に見るのとでは、全然逆になることがある。
どんな物だって一面だけ見れば必ず良いところがある。
と同時に必ず悪いところがある。
そして結論は出ない。

ある人はあれはいい人だという。
ある人は彼奴(あいつ)はいかんという。
一面だけ見ておると結論は出ない。
これを多面的に見れば見るほど、その人間がよく分かってくる。
いわんや全面的に見ることができればはっきり結論が出る。

第三には、物を枝葉末節でみるのと、根本的に見るのとの違い。
枝葉末節に捉われる場合と、根本的に深く掘り下げて考える場合、往々にして結論が正反対にもなる。
しかし、これもまた同じことで、枝葉末節で見たのではすぐ分かるようであって、
実は混乱するばかり、矛盾するばかり。
やはりできるだけ根本に帰って見れば見るほど、物の真を把握することができる。

『活眼 活学』PHP研究所

この、「長い目で見る」、「多面的に見る」、「根本的に見る」という三つの物の見方、考え方は非常に重要だ。
その前提が違えば、議論がかみ合わないばかりでなく、結論が逆になる場合が往々にしてあるからだ。

その第一が、「目先で見るか、長い目で見るか」
自分の過去を振り返ってみると、耐え難い苦労や、困難の一つや二つはあったはずだ。
しかし、その苦労も、過ぎてみれば、「なんていうことはなかった」、
「むしろいい思い出になっている」という場合が多い。

苦労のあったその時の悲惨な気持と、時間が経過した時の気持は変わっている。
将来のことも同じで、長い目で見たときは、
今自分に立ちはだかる大きな壁も、さもない障害なのかもしれない。

第二が、「一面的に見るか、多面的・全面的に見るか」
物事にはすべて裏表があり、見る方向によってまったく違う。
短所はある意味で長所であるとも言える。
臆病な人は、慎重だとも言えるし、鈍感な人は、打たれ強いとも言えるからだ。

だから、ちょっとした事実、あるいは印象だけで、人を判断することは非常に危険だ。
人は多角度から見ないとわからない。

第三は、「枝葉末節でみるか、本質・根本で見るか」
表面的に現象面で見るのと、本質面で見るのとでは結論はまるで違う。
我々はとかく枝葉にとらわれがちだ。
「木をみて森を見ず」になりやすい。

抽象論で見るのか、具体的に見るのかの違いでもある。
本質面は、その人の具体的行動に現れる。
口ではいいことばかり言っている人が、いっこうに動かない、というような場合だ。

この三つの見方・考え方をマスターし、実践している人は言葉や行動に深みがある。
根本の考え方や哲学がしっかりとしていて、背筋に一本筋が通り、肚ができている。

物事の考え方や見方をしっかりと会得し、深みや重みのある人間でありたい。



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