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2011.1.1

平成23年の元旦にあたり

安岡正篤師の心に響く言葉より…

一年では「神代のことも思はるる」という元旦。
人間で言うなら幼児。
地球でいえば混沌(こんとん)、大初(たいしょ)である。

夜明けは実に静寂で、光明で、清浄である。
明るく、静けく、清い。

伊勢神道はこれを本領とするもので、機前を以って心と為し、
諸々の汚れや俗気を斥(しりぞ)けて、神氣を嘗(な)め、正直清浄を行ずるのである。

機前とは、一日で言うなら、日が出て鶏が鳴き出す、人間世界のいろいろな営みが始まる、
こういう働きを機というから、その前で、暁(あかつき)である早朝である。

『安岡正篤一日一言』致知出版社

神道においては、「機前」は非常に大事だ。
機とは、きっかけや、きざしのことであり、転機、あるいはチャンスのことでもある。

宮中では、一年の最初の行事として、天皇陛下が元旦の寅の刻(午前四時頃)に、
伊勢神宮に向って拝礼されたあと、東西南北の神々を拝される。
これを四方拝といい、今年一年の天災を祓い、五穀豊穣、天下泰平と、国民の無事息災を祈願されるという。

約120年前に雑誌の特派員として来日したラフカディオ・ハーンは、次のような言葉を残している。

「ある日の朝、まだ太陽が昇る前、自宅の塀(へい)の外ががやがやと騒がしいので、外をのぞいて見た。
すると、村人たちが近くの小川で、うがいをしたり、顔を洗っていたが、
そのあと、山から太陽が昇るのを見ると、太陽に向ってパチパチと手を打って祈っていた」

この光景をまのあたりにして「世界にこんな素晴らしい国民はいない」と感動し、
日本に帰化することを決意したという。

その後、士族の娘小泉節子と結婚し、名前を小泉八雲と改名したが、
八雲は、太陽の恵みや自然の営みに感謝する日本人の謙虚な姿にうたれたのだ。

古来より、日本人にとって、まだ太陽が昇る前の、暁(あかつき)の時間はとても大切だ。
大きなチャンスの時でもあり、何かが変わるかもしれないという、きっかけをつかむ時でもあるからだ。

元旦にあたり、大いなる自然の恵みに感謝し、今年一年を良き希望の年としたい。



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