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2010.12.30

端(はた)を楽させる

女性理容師、加藤寿賀さんの心に響く言葉より…

このごろ、自分のために“はたらき”たいとか、楽しんで仕事をしようとか、
そういうことを言う人が多いですよね。

ただ、それでは大切なことを見失っていると思うんです。
人間はなぜ、“はたらか”なくてはいけないか?
それは「端(はた)を楽させる」ためなんです。
つまり、「はたをらく」に、で「は・た・ら・く」

自分のためにではなく、人のため。
人間として、“はたらか”ないと、人生何の意味もないのです。

私は15歳のときに銀座の理髪店に修行に入ってから、
94歳の現在まで、約80年、はたらき続けてきました。

「そんなにこの仕事が好きなの?」って聞かれますが、それだけでは、ここまでは続きません。
やっぱり、「人のため」と思って、はたらいたから続けてこられたんだと思うんです。

最初は、家族のためです。
生まれた娘との生活を守るために朝から晩まで必死に働きました。

戦争中は主人が出征してしまったため、主人の両親、義弟の家族、私の娘二人…
みんな、私一人で養わなくてはいけなかった。

主人が復員してきましたが、終戦の年の暮れに交通事故で亡くなりました。
それからは「娘二人を守っていく」と誓って必死にはたらきました。

「自分のためだけにはたらく」なんて心持ちでいたら、今まではたらき続けることなんてできなかった。
「誰かのために」と思ってきたから、私自身、はたらかせていただくことができたんです。

若い人の中には、人間は「人さまのためにはたらくんだよ」ってこと、
「世の中のためにはたらかなきゃいけない」ってことを知らない人が多すぎる。

だから何の仕事に就こうか、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、
この会社では自分を生かせないとか言って、せっかく就いた仕事も辞めたりする。

でも、「周りの人のためにはたらくんだ」って分かれば、そう簡単には辞められないでしょう。
仕事を辞めたいと思っている人は自分しか見えなくなっているけど、
顔を上げて周りのことを考えてみなさいと、言いたいですね。

人はみな、端を楽(はたらく)させるために生かしてもらっているんですから。

『なぜ、はたらくのか 94歳・女性理容師の遺言』主婦の友社

「今の仕事が好きですか?」とは、よく受ける質問だ。
もちろん、好きでなければ仕事を続けることはできない。
しかし、それだけの理由なら、何かの拍子にちょっと嫌なことでもあって、
好きでなくなったら、すぐに辞めてしまうかもしれない。

仕事を長く続けるには、それが好きであること以外に、
何らかの確固たる、使命感なり、信条なり、哲学が必要だ。
それが、「はたを楽にすること」。

端(はた)とは、家族であったり、両親、親戚、友人、仲間という身近な人々。
まずは、身近な人たちを幸せにすることができなければ、
遠くの人や見ず知らずの人たちを幸せにできるわけがない。

どんなに強く念じた夢であろうと、想いであろうと、それが「自分の楽しみのため」だけだったら、
実現する可能性は著しく低くなる。

誰かのために動いている人は、ぶれないし、あきらめない。
そして、きらきらと輝いている。

「はたを楽にする」ために、必死で働きたい。



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