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2010.12.17

千年先の話

宮大工棟梁の西岡常一氏の心に響く言葉より…

昭和45年、奈良で、千三百年前の匠(たくみ)の技と競い合おうとしていた男がいた。

鬼と呼ばれた宮大工・西岡常一62歳である。
西岡に託されたのは、名刹・薬師寺金堂の復元だった。

一口に復元といっても、並大抵のことではない。
何しろ、千三百年前の図面などなく、すべてはゼロから生み出さなければならない。
この仕事のためには、少なくとも腕の立つ三十人の宮大工が必要だった。

しかし、西岡の元に集まった三十人は、この夢の建築に心を躍らせてはいたが、
宮大工の経験の全くない一癖も二癖もある若者たちだった。

若者の一人、建部清哲が「教えてください」とすがり付くと西岡に跳ね返された。
「あんた、甘えたらあかん。
考えなはれ。
人に聞いとるとじき忘れるで。
木と対話して仕事しなはれ」

「何を木と対話するなんて、そんな余裕あるか」と憤(いきどお)った。
全く仕事を教えない西岡に若者たちの不満は募った。

その時、西岡は言った。
「建物は良い木ばかりでは建たない。
北側で育ったアテという、どうしようもない木がある。
しかし、日当たりの悪い場所に使うと、何百年も我慢するよい木になる」

「歳月の重みで屋根の反りは落ちていく。
千年後に、設計通りなる」
(屋根を支える隅木を設計よりも五センチ高く組んだ理由を聞かれて)

『プロジェクトX リーダーたちの言葉』文藝春秋

西岡常一棟梁(とうりょう)のただ一人の内弟子と言われた、小川三夫氏はこう語る。

「木は、肥沃(ひよく)な土地では成長の途中で腐ってしまい、
大きくはなれない。生育が悪いからこそ大きな木になれる。人間も同じだ」

日当たりの悪い場所に、日陰で育った木を使うと何百年も我慢できる、と言う。
劣悪の環境で育った人間には、その苦労が役立つ働き場はあり、
また、それがステップとなり大きく伸びるチャンスも出てくる。

何千年と風雪に耐えてきた木造の建物は、
現在のコンクリートと鉄で造られた建築とは根本的に考え方が違う。
それがわかるには、千年以上立っている法隆寺や、薬師寺の実物を見て、自分で考えるしかない。
設計図面などないからだ。

昨今は、ドッグイヤーと呼ばれるほど、変化は激しい。
1年先を考えるのが、せいぜいだ。

しかし、木で造られた日本のお寺や神社は違う。
何百年先を見据えて造らなければならない。

千年先とは言わないが、目先の小さな利益は追わず、
時には、長い目でゆっくりと自分の人生を考えてみたい。



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