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2010.11.10

ご免なさい、叔父さん

松田和さんの心に残るいい話より…

60年余り前になります。
私が六歳の頃、父の事業が失敗して、ほかの事業をしても昭和8年頃の不景気な時代ですから、
焦れば焦るほど泥沼にはまり、住むところもなく、その日の食事にも事欠くありさま。
母は赤子の妹をおんぶして身を隠してしまいました。

残るは父と二人。
その後職を転々と変え、とうとうどこもうまくゆかず、最後には橋の下で寝るような生活になりました。
思い余って父方の妹の家へ行って二、三日いるうち、
叔父が「男なら立ち直ってやりとげろ、それまでこの子を預かるから」と言ってくれたので、
父はどこかへ出ていったきり行方不明になってしまいました。

私は、本当は三年生になる年なのに一年半も学校へ行っていないので、また一年からやり直し。
叔母は私が身内なので叔父に気を遣(つか)ったり、
世間の人が連れ子だろうなどと言うので少なからず迷惑していたようで、
自分の子供二人とは差別していました。

そこへいくと叔父は心の優しい人で、かえって叔母の陰で私をかばってくれたり、
叔母にも「子供には罪がないのだから、うちの子供と一緒の扱いをしなさい」と言っていました。

二年生になった九月の末の運動会の予行練習のことでした。
一年生のとき買ってもらったブルマーが、品物が悪くてボロボロになってはけず、
ニ、三日前に白パンツに墨汁を塗りつけて当日はいたのですが、
競技中に雨が降ってきて、濡れたら墨が足の方まで流れ出し
て先生には怒られるし友だちには笑われるし、散々な目に遭いました。

あと一週間後の本運動会にはどうしてもブルマーが欲しく、
思い余って二日後の夜、叔母の家のタンスの引き出しから十円持ち出して学校の帰りに、
衣料品店で気に入ったブルマーを買いました。
ついでに、他人の小さくなったクレヨンをもらって使っていたので、
二十四色のクレヨンも文房具屋で買いました。
残ったお金は紙袋に入れ、小さくたたんで便所の窓の隅に置いておきました。

翌日、叔母に見つかって二階に呼ばれました。
叔母はカンカンに怒って
「お前のような者、飼い犬にかまれたと同じで、もう家にはおいておけないから孤児院へやる」と、
訳も聞かずに階下へ叔父を呼びに行きました。

叔父に「叔父さんごめんさい。もう絶対にしませんから孤児院にはやらないでください」
と手をついて謝りました。
叔父は「お金が入用だった訳を話してごらん」といいました。

私は、ブルマーの話をしたら、叔父はきちんと座り直し
「叔父さんがついていながらそんな肩身の狭い思いをさせてすまなかった」と頭を下げ、
反対に「うちの子と差別した」と叔母を叱りました。
私はてっきり怒られるものと覚悟していたのに、びっくりしてしまいました。

私が悪いのに謝るなんて…。
これからはどんなに困っても人の物を取ることだけはしまいとつくづく思いました。
七十年近い人生を生きてきましたが、こんなに良い叔父に三年間世話になったことが、
一生の思い出として心に残っています。

“ご免なさい、叔父さん”より 

『心に残るいい話』新潟日報事業社

リーダーや責任ある地位に立つ大人は、時には、片目をつぶって見る必要がある。
その上なお、あけている片方の目は、薄目で見るくらいでちょうどいい。

部下や信頼していた人が、問題を起こしたとき、優れたリーダーは、
「なぜそのようなことを起こしてしまったのか」を問い、相手を責めるのではなく、
次に問題が起きないよう、自ら反省し、自らの責を問う。

昨今は政治家をはじめとして多くの人が、他人のせいにする。
しかし、部下が起こした不祥事も、そうさせてしまった責任の一端は自分にある、
と考えるのが成熟した真のリーダーの考え方だ。

人には優しく、自分に厳しいリーダーでありたい。



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