2010.10.27 |
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お金は出口の方が大事 |
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植島啓司氏の心に響く言葉より…
大きな幸運を願う人はそれだけ大きな犠牲をも考慮しておかなくてはならないだろう。
幸運ばかり願う心にこそ災いは忍び込むものである。
自慢したり、傲慢(ごうまん)だったり、他人を犠牲にしたりする人間は、
それだけで大きなリスクを抱え込むことになる。
ちょっと前のことだが、ラスベガスのカジノで、スロットマシンの大当たりが出て、
史上最高の3495万ドル(約37億円)を獲得した女性がいた。
シンシア・ジェイさん(当時37歳)。
その後、結婚し、幸せな生活を送っていたのだが、マスコミで大きく取り上げられて以来、
金の無心をする電話に悩まされ、人前に出るのを嫌うようになった。
それだけならまだいい。
実は、彼女はその後、酒酔い運転の車にぶつけられ、
瀕死(ひんし)の重傷を負ったばかりでなく、同乗の姉を亡くしてしまったのだ。
とてつもなく大きな幸福は同じくらい大きな不幸をも招き寄せてしまうのである。
いくら身辺に気をつけていても、やはり起こるべきことは起こってしまうのである。
宝くじに当たった人の追跡調査でも、
その多くが以前よりも不幸になっていることが判明している。
『偶然のチカラ』集英社新書
「惜福(せきふく)」とは、明治の文豪、幸田露伴の言葉だが、
同じような言葉に「分福(ぶんぷく)」と「植福(しょくふく)」がある。
いわゆる、幸福の三説だ。
「惜福(せきふく)」は、福を惜しむことであり、大きな幸運にであってもそれを使い尽くさないこと。
「分福(ぶんぷく)」は、受けた福を、人に分け与えること。
「植福(しょくふく)」は、将来のために、今の福を植えることであり、幸せの種まきをすること。
先日、中村文昭さんの講演を聞いたが、まさにこの三つの福の実践をしていた。
年間ほぼ毎日講演している文昭さんの、講演や本による収入は莫大なものになることは想像できる。
しかし、奥さんや子供さんが住んでいる家は、古い小さな借家。
自家用車もなく、自転車で出かけるそうだ。
子供たちが、あまりの貧乏さに学校でバカにされたとき、奥さんは泣きながら実情を話した。
「お父さんは、たぶんアンタの行っている学校の中でも、本当は一番多いくらいの収入があるの。
でも、お金は全部人のために使うから、家にはないだけなのよ」と。
文昭さんは、北海道で「耕せにっぽん」という活動をしている。
全国のひきこもり・ニートと呼ばれる若者たちを、農業を通して社会に復帰させ、
同時に過疎化や高齢化の進む農業も活性化しようという壮大な計画だ。
文昭さんは、「お金は入り口より、出口の方が大事」という。
つまり、大金を手に入れることより、それをどう使うかのほうが問題だ、と言うのだ。
どんなに大金を手に入れようと、その使い方が間違っていたらお金は死に金になってしまう。
あるいは、それを何も使わず貯めておくだけなら、それはまさしく「死蔵」だ。
宝くじで大金を手に入れた人の多くが以前より不幸になっているのは、
お金の使い方に問題があるのだろう。
あぶく銭があると思えば、親戚や知人、そして知らない人まで集まってくる。
「お金やモノにこだわらず、恬淡(てんたん)として生きる」
福を惜しみ、福を分け、福を植える人生を歩むことができたら最高だ。 |
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