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2010.9.27

捨てなければ、何かを得ることはできない

師友塾塾長の大越俊夫氏の心に響く言葉より…

『何かを決断するということは、同時に何かを捨てるということ。
捨てなければ、何かを得ることはできない。』

私は子どたちにわかりやすいように、
「あの娘とつきあったら、今つき合っているこの娘とはつき合えないんだぞ」という話をする。

誰かとつき合うのならば、別の誰かは捨てなくてはならない。
二人取ろうとするから悩むのだ、と。

私は三十歳の時、あれほど憧れていた大学の教師の座を蹴って、師友塾を始めた。
師友塾を選ぶということは、大学の教師はもうできないわけである。
それはとても寂しいことだった。
本当にこれでいいのかと思った。

しかし、どっちつかずの状態で両方に可能性を残すことを、私はしなかった。
あれもこれもと思っていては、決断できない。
決断するというのは、ほかの何かを捨てることなのだ。

『6000人を一瞬で変えたひと言』サンマーク出版

師友塾は不登校児、中退生を対象にした私塾だ。
6000人以上の若者と、とことんつきあい、魂と魂をぶつけ合い、
壮絶な闘いを繰り返し、互いを高めあってきたという。

大越氏はこういう。

『彼らは「学校へ行けない」のではなく、「学校へ行かない」ことを選んだのです。
したがって、師友塾は、不登校児を元のコースに戻すことを本来の目的にはしていません。
テーマは「元気」です。
笑顔を失った彼らが笑顔を取り戻し、
腹の底から大きな声を出せるようになることを重要課題にしているのです。」

確かに、元気や笑顔のない人に、どんな素晴らしいアドバイスをしたとしても、
肚の底にはストンとおちない。

まず、するべきは、元気と笑顔を取り戻すことだ。
そうしたら、自ら何か動き出したくなる力が湧(わ)いてくる。

日常では、何かを決めたら、何かをあきらめなければならない、
という決断を迫られることがほとんどだ。
もちろん、あれも、これもと選ぶことができるときもある。

しかし、大事な決断は、ほとんどが二者択一(にしゃたくいつ)だ。

禅に「両忘(りょうぼう)」という言葉がある。
両忘とは、美と醜、苦と楽、生と死という、対立した概念を両方忘れることだ。

つまり、「生死を忘れる」と、自在の心境となり、思わぬ力を発揮する。

難しい決断を迫られたときは、どちらにするか迷いに迷うが、
実は長い人生では、どちらを選択しても同じだったかもしれないと、年を重ねたときわかる。

何事も、一生決めずに、先延ばしすることはできない。
両忘の気持で、決断すれば、大事なものでも捨てることはできる。

捨てなければ、何かを得ることはできない。



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