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2010.9.24

大人の嘘について

塩野七生氏の心に響く言葉より…

大人の嘘について話したい。
だからもちろん、無邪気どころかたいへんに深謀遠慮な嘘の例である。
私には処女作であった『ルネッサンスの女たち』の時からの、最も信頼していた編集者がいた。
いた、と書いたのは、彼は数年前に不治の病で、若くして世を去ったからだ。

ただ、もしその人が処女作から私を担当していなかったら、
作家塩野七生は存在しなかったであろうと思っている。
なぜならその人は、少なくとも私に対しては、嘘をつく名人であったからだ。

「キミは男たちを感嘆させる作品を書ける、数少ない女流作家になるだろう」
私が作家志望の文学少女であったことはなく、
ここで叱咤(しった)したらすぐさまヤーメタと放り出しそうなのを知っていたのだ。

案の定、ほめられるとすぐにいい気になる私は、
その次の日から始まったシゴキを平然と耐えたものだった。

しかも、私の性格まで見通していたらしい彼は、
キミは同性からの絶対的な支持を受ける作家になる、
などとは言わず、異性である男たちを驚かせる物書きになるだろうと言ったのである。

『男たちへ』文藝春秋

フランスの作曲家のドビュッシーは、「芸術とは、最も美しい嘘のことである」と言った。
芸術はある面で現実とは違う虚構の世界であるが、
その虚構の世界を通して真実を追究している。
どんなに、事実に即した小説でも、或いは写実的な絵画でも、創作の世界である。

「嘘を言ってはいけない」、と子供の頃から散々言われてきたが、美しい嘘なら必要なときもある。
たとえば病気の時、医師から、「あなたは不治の病で治らない」と、宣告されたらどうであろうか。
逆に、同じ病気でも、「奇跡が起こるかもしれません、
一緒に頑張りましょう」と言われたら、こちらの方がよほど気が楽になり、ほっとする。

開高健いわく、
「凡庸な真実よりもきれいな嘘のほうが、しばしば人生には必要なんだ」
(知的な痴的な教養講座)

まさに、凡庸な人間は、状況を考えず、馬鹿正直に真実を伝えようとし、それが正義と考える。
正義の押し付けは、時として人を傷つける。

美しい嘘は、人を奮い立たせもするし、人生に鮮やかな華を咲かせることもある。
凡百(ぼんびゃく)の事実をいくら並べ立てようが、勇気をもらうことはできない。

人を元気付ける、大人の嘘なら歓迎だ。



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