2010.8.29 |
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ボールを持ったら離さない人 |
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多摩大教授の樋口祐一氏の心に響く言葉より…
待ってましたとばかりに、話の流れを強引に自分の側へ引き寄せるような人は、
基本的に、他人の話を聞いていない。
最初から「今日はこの話をしたい」という気持ちがあって、そのタイミングを見計らっている。
つまりそこには、周囲をたのしませようとするサービス精神がない。
ひたすら自己主張したがっているだけなのが、ミエミエだから、聞く側は不愉快に感じるのだ。
会話には、言葉というボールを使う集団競技のような面がある。
全員がプレイヤーとしてフィールドに立っているから楽しめるのであって、
「観客席」に追いやられたのではつまらない。
お互いにパスを回しながら、それぞれに「自分のプレイ」を披露するチャンスを与え合うのが理想だ。
自分のウンチクを傾けたくてウズウズしている人は、そのパスが回ってくるのを待っていられない。
他の人に出されたパスを横取りしてでも、自分でシュートを打とうとする。
もちろん、そこで万人を唸(うな)らせるような圧倒的な「個人技」を見せることができるなら、
わがままなプレイも許されるだろう。
だが、ウンチク語りでそこまでの「個人技」を見せられる人はほとんどいない。
よほど聞き手を楽しませる自信があるなら別だが、
単に「この分野に詳しいと思われたい」というだけなら、
無理にボールを奪いに行かず、パスが回ってくるのをじっと待っていたほうがいいだろう。
「ボールを持ったら離さない人」は、カラオケでマイクを離さない人と同じで、
次の人にパスを出すことを考えずに、
いつまでもダラダラとウンチク話を続けていれば、嫌われるのが当たり前だ。
要するに、「サービス精神」のない人は何をやっても会話上手になれないということ。
『知的会話入門』朝日新書
人は誰でも、自分の話を聞いてもらいたくてしかたがない。
認めてもらいたいからだ。
特に、知っていることや自分の得意技に関する話題は、話したくてウズウズしてしまう。
「自分は人の話をよく聞くほうだ、半分以上は聞いている」、
と思っている人がいたら、 7、8割はしゃべっている。
「にじみ出るのが教養、ひけらかすのがウンチク」だと、樋口氏は言う。
教養とまでいかなくても、温かさや、優しさ、思いやり、といった人柄が、
自然ににじみ出る人はいつも控え目だ。
オレがオレがと自己主張し、自慢する人は、自己中心的で、人を見下す人でもある。
自分からボールを奪いに行かず、パスが来るのをじっと待つ人。
ボールを持ったら持ちすぎず、すぐにパスを回す人。
そんな、人を喜ばせることをいつも考えている人は魅力的だ。
「ひけらかさずに、にじみ出る」、そんな風格のある人でありたい。 |
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