2010.8.28 |
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どの時代に生まれても |
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百瀬昭次氏の心に響く言葉より…
江戸時代の末ごろから明治維新にかけての大変動期、
日清戦争を初め日露戦争、満州事変、日中戦争、太平洋戦争、
終戦へと続く明治・大正・昭和の初期の時代にしても、
いつも何かの事変が大きく揺れ動いていて、
人の心の休まる時のないままに、激動をくり返してきました。
このように、どの時代をとって見ても、細かく観察すると、
不安定な動きのともなわなかった時代など、
どこにもないということが理解されるのです。
不況不況とさわいでいますが、
大小の銀行が相ついで倒産した昭和初期の大恐慌時代にくらべれば、
とうていその比ではありません。
物質は豊かで、自由はあるし、いいたいことや、
やりたいことが好きなようにできる今の世の中は、
今までの日本の歴史にはどこにも見られなったところでしょう。
「嫌なご時世だ」「こんな時代だから、あきらめるより仕方がない」
「みんな世の中が悪いんだ」などと、自分を棚にあげて、
すべてを他人の悪と決めつけてしまうのです。
自分の不幸を世のなかのせいにするような破壊的な考えをつづける限り、
ますます不幸は大きくなるばかりで、幸福になる見込みはますます遠くなります。
なぜならば、そもそも時代(世の中)とは、形はちがっていても、
いつの世も多くの難問をかかえながら、つぎの時代にむかって変化していくものであり、
これで十分だという世の中は全くありえないからです。
これを逆にいえば、人間のとりくむ問題が全くないという時代があったとしたら、
それはもはやわたしたち人間の存在そのものが無意味になってしまうわけですから、
そんなことは絶対に考えられないことです。
『君たちは偉大だ』偕成社
これは、1980年に、少年少女に向けて書かれたものだが、
未だに色あせない輝きをもった啓発の書だ。
我々はいつの世も、今が一番大変で、困難なことが多い時代だと思ってしまう。
何年前の本を読んでも、そこにはたいてい、「今が一番大変な不況のとき」と、書いてある。
現に、この1980年代も不況だったという。
同様に、どの時代でも、「政治が悪い」、「世の中が悪い」、「時代が悪い」と、
毎年同じようなことが繰り返し言われる。
「悪い時代」、と思って見れば悪いところが見え、「良い時代」、と思って見ればいいところが見える。
世の中のせいにする人は、どの時代に生まれても、結局不平不満を言って一生を過ごす。
我々はあまり気づかないが、時代は進むにつれ、少しずつ進歩し、よくなっている。
現に、殺戮(さつりく)も、飢餓も、疫病(えきびょう)も、
100年前、200前からすればずっと少なくなっている。
今、我々が平和で豊かなこの時代に生まれてきたことは、
長く続いた戦乱と激動の歴史から見れば、まさに奇跡のようなこと。
今生(こんじょう)に生を受けたことに感謝し、
文句を言わず、与えられた問題に取り組みたい。 |
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