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2010.8.26

怒鳴り声が木を倒す

ロバート・フルガム氏の心に響く言葉より…

南太平洋ソロモン諸島には、木を伐(き)るのに何とも不思議な風習がある。
木があまりにも大きくて斧では歯が立たないと、
原住民たちは怒鳴りつけてその木を倒すのである。

特殊な能力を持った樵(きこり)たちが夜明けにそっと木に忍び寄り、
いきなり声の限りにわめき立てる。
これを三十日にわたって毎朝欠かさずに続けると、
木は次第に衰えて、ついには倒れてしまう。

怒鳴り声が木の精を殺すのだ。
原住民の話によれば、これで倒れない木はないという。

私はどうか?わたしは家内を怒鳴りつける。
電話機や芝刈り機を怒鳴りつける。
テレビや新聞や子どもたちに食ってかかる。
隣の主人はやたらと車に当り散らす。

怒鳴りつけたところでどうなるものでもなかろうに。
生き物をどやしつけることは、ともすれば相手を疎外し、
意気阻喪(そそう)させる結果にもなりかねない。
言葉は人の心を傷つける…。

『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』河出書房新社

日本には「忌(い)み言葉」というものがある。
結婚式や、お祝いの席で、言ってはいけない言葉だ。
例えば、別れる、壊れる、離れる、滅びる、終る、切れる、消える、倒れる等々。
これらは、言霊(ことだま)の考え方からきている。

言霊(ことだま)とは、声に出した言葉が、現実に何らかの影響を与えるという考え方だが、
いいことを言えばいいことが起き、悪いことを言えば悪いことが起こるということ。

「大和(やまと)の国は言霊の幸(さき)はふ国」(万葉集)
古来より日本は、言霊の力によって幸いがもたらされる国と言われてきた。

言葉には不思議な力がある。
大木をも倒してしまうほどの力だ。
誰かを怒鳴ったり、ひどい言葉でののしり続ければ、やがては人も倒れるに違いない。

言葉で幸いがもたらされるなら、いい言葉を使うこと。
日本は言霊の国だから。



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