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2010.8.21

カンが狂っているとき

将棋の米長邦雄氏の心に響く言葉より…

将棋で一番大切なのはカンだと思います。
このカンが狂っているから、負けがこむ。
自分のカンに自信が持てなくなった勝負師ほどみじめなものはありません。
こういう時はそのカンを正常に戻すことが何よりも大切です。

一番いい手当ては、自分のベストの状態の感覚を自分に思い起こさせるというか、
自分の目にそういうものを見させてやることです。
具体的には、勝った将棋を並べる。

あるいは、好調の頃の自分の生活を思い出してみる。

あの時は誰とも付き合わなかったとか、
誰それとよく酒を飲みにいったのが気分転換になって、いい結果を生んだのだなとか。
なるほど、こういうところに余計な神経を使っているからダメだったのだ、
と気がつくようになり、不調の原因の一端がわかってくるのです。

そして、原因がわかれば、半分は直ったと思ってもいい。
病人と同じで、最も大きな不安は、
「なぜ調子が悪いのかわからない」ということなのですから。

ある人に会うと、不思議に勝負に恵まれる。

逆に、避けたほうがいい人もいます。
たとえば、我の強い人や、私の足を引っ張ろうとする人。
だいたい、こちらが神経を使わなければならない人に会うのは、不調の時はよくありません。

『人間における勝負の研究』祥伝社黄金文庫

物事が順調に行かないときは、カンが狂っているのかもしれない。
そんなとき大切なのは、あれこれ迷って色々な手を繰り出すのではなく、
調子よかった頃のカンを取り戻すことに専念することだ。

カンが狂っているときには、どんなに考え、最善だと思われる手を打ったとしても、
次々と悪手(あくしゅ)となってしまう。

不調の時は、なぜ上手(うま)くいかないのか、その原因が分からないことが多い。
不調の原因は一つではないからだ。
様々な要素が複雑に絡んでいる。

それを解きほぐすにはまず、一個一個、不調の原因と思われることを取り除く。
その上で、いいと思われることをひとつひとつ足していく。

不調の原因を取り除かないで、別の手を打っても、
それはマスキングと同じで根本的な解決とはならず、うまくいかない。
マスキングとは、悪臭があるとき、それを他のいい香りで上塗りして隠すこと。

いいときは、あまり考えなくても、打つ手がすべて上手くいく。
人生の、ここぞという勝負にはカンが必要だ。



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