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2010.8.10

狎(な)れてはいけない

ジャーナリストの大塚英樹氏の心に響く言葉より…

10年ほど前のことだ。
明治生命会長だった波多健治郎さんから
セコム創業者の飯田亮(まこと)さんを紹介してほしいと頼まれて、会食の場を設けたことがあった。
飯田さんと波多さんとの会食では、双方から「会社をこうしたい、ああしたい」と、いろいろな話が出た。

食事が済んで酒を飲み始めると、話題が社外重役のことになった。
デリケートな話題なので、私は「ここは口を挟(はさ)んではいけないな」と思って話を聞いていた。

ところが、酒が入っていたことが災(わざわ)いしてしまった。

「うちには役員が二十三人いましてね。そのうちの二、三割は社外重役です」
と飯田さんが言ったとき、私はとっさに、
「えっ、飯田さんのところは役員が二十三人もいるの?それは多すぎますようねえ。
それだったら明治生命には役員が100人いてもおかしくないでしょうね」
と、安易にポーンと言ってしまったのだ。

飯田さんは、私をグッと睨(にら)みつけた。
初めて見るような怖い顔だった。
私の言葉は完全に無視された。
「怒らせてしまったな」と思った。
そこで自制すべきだったのだが、そのあと、またしてもなにかの拍子に、
「セコムも役員を10人ぐらいに減らしたらどうですか?」と蒸し返してしまった。

「俺の会社のことを、君にとやくかく言われる筋合(すじあ)いはないよ」
飯田さんは、即座に突き放すように答えた。
顔はにこやかだったが、やはり怒りを買ってしまったことは明らかだった。

やがて会食が終わり、まず波多さんを見送った。
そして、飯田さんを送る車が来るまでに五、六分の間ができたとき、私は自分の非礼を詫(わ)びた。
「さきほどは失礼しました。口がすぎました」
すると飯田さんは、こう言ったのである。

「君、なれるなよ」

飯田さんとは、私がフリーになって以来の付き合いで、
仕事を離れて何度も行動をともにするうちに、私は距離感を見誤り、
会食の席でつい馴(な)れ馴れしくしすぎて、越えてはいけない一線を越えてしまったのだ。

『「距離感」が人を動かす』講談社+α新書

ジャーナリストの大塚英樹氏は500人以上の経営トップに会い、インタビューをしてきたという。
中には、仕事を離れて行動をともにするほど親しくお付き合いしている経営者も数多くいる。

どんな人にも、かわいがってくれる上司や先輩は、何人かはいる。
そんな大事な先輩であっても、お会いしているうちに「狎れてしまう」ことがある。

普段は丁寧な口調で話をしていても、時としてぞんざいな友だち言葉を使ってしまったり、
聞かれてもいないのに、偉そうに何か意見を言ったり、教えてしまったりする。

或いは、先輩主催の会に招待された時、他の大事な招待客を差し置いてしゃしゃり出て、
さも自分は親しいと、長々と話しかけたりする。

また、ある会社の社長の話だが、彼の友人が会社に訪ねてきたときのこと。
受付で、「おい、鈴木はいるか?」と偉そうに言った。
受付の女性は、びっくりして、「どちら様ですか?」と訪ねると、「社長の鈴木の同級生の○○だ」、と。
しかし、アポイントを取らないで社長を訪ねてくる人などめったにいない会社だったので、
受付の女性は非常に困ったそうだ。

「親しき仲にも礼儀あり」である。
いくら同級生であっても、相手は立場のある人だ。

公の場での距離感は大事だ。
プライベートでどんなに親しくても、その距離感を見誤まってはいけない。
公の場では、下座にいて、よそよそしいくらいで丁度いい。

社会的立場が上の人と長く一緒にいると、自分まで偉くなったように錯覚(さっかく)してしまう人は多い。

どんなに親しくなっても、越えてはいけない一線はある。
狎(な)れてはいけない。



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