2010.8.3 |
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ツキのフクロの大きさは同じ |
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竹内一郎氏の心に響く言葉より…
麻雀小説で一世を風靡(ふうび)した阿佐田哲也氏は、人の一生をこんな風に見ていた。
“人はこの世に生まれるとき、一定量の運を持っており、
運と引き換えに金や名誉を得、運を使い尽くしたときに死を迎える”
この場合は、「運」を「何かを得るために使われるエネルギー」と考えたほうがわかりやすい。
何かを得るためには、それ相応の何かを失うはずだ。
それを仮に運という言葉で呼んでみたのだ。
一億円の宝くじが当たるとする。
それはただ儲かったのではない。
一億円分の運を使っただけなのである。
この世には損も得もない。
何かと何かを交換しているだけなのだ。
人の一生を、プラス・マイナス・ゼロと見立てるのである。
これは科学でいう「エントロピーの法則」ともどこか似ている。
世間に目をやると、ツキに後押しされて人気の出た芸人や歌手、
ベンチャー企業の経営者などの「ツキの袋」が破れた瞬間を、いくつか思い出す。
ちょっと前に手仕舞(てじま)っておけば、
あんな大火傷(おおやけど)を負うこともなかったろうに、と思ったりもする。
芸能人や実業家がマスコミの寵児(ちょうじ)となり、
梯子(はしご)を二段飛ばし、三段飛ばしでのし上がり時の人になっていくことがある。
ところが当人が天狗になってしまった辺りで、
過去のスキャンダルが暴かれて、あっという間に転落してしまう。
「人間ツキのフクロの大きさは同じだ。勝ち過ぎれば必ずやぶける」(阿佐田哲也)
『ツキの波』新潮新書より抜粋転載
「勢(いきお)い使い尽(つ)くす可(べ)からず」
という五祖法演(ごそほうえん)が与えた戒(いまし)めの禅語がある。
その後続けて、
「勢い、もし使いつくさば、禍(わざわ)い必ず至る」
と言い切っている。
人は調子のいいとき、自分を過信し、有頂天となり、傲慢(ごうまん)になることが多い。
そして、好調の時に、もっと幸運を得ようと勢いこむ。
しかし、そんな好調ときには、往々にして破局の種がまかれている。
「人間は不幸の時に不幸がはじまるのではなく、
いわゆるツイているときに破局の兆(きざ)しが起きている。
禅者は、“薄氷を踏むが如く言動を慎(つつし)め”」と教えるのは、松原泰道師だ。
また、
「福、受け尽くすべからず」という言葉が次の戒めの言葉にある。
福や楽しみを、いい気になって使い尽くしたら、
その幸をもたらした縁がぷっつりと切れてしまう、ということ。
逆に言えば、今ツイていない人には、必ずいつかツキがやってくるということになる。
今ツイていないと不貞腐(ふてくさ)れず、地道な努力を重ねて待つことが必要だ。
人間のツキのフクロの大きさは同じ。
運や、福を使い尽くしたら、必ず破局がやってくる。
「分(ぶ)をわきまえる」、という言葉があるが、
足るを知り、大言壮語(たいげんそうご)せず、身の程(ほど)をわきまえる、ということ。
自らの分を知る人に、ツキはやってくる。 |
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