2010.7.30 |
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「ほめる」と「ねぎらう」 |
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小阪裕司氏の心に響く言葉より…
横浜国立大助教授であり、臨床心理家の堀之内高久先生に教わった概念が「ねぎらう」です。
今回のワールドカップではないのですが、先の日韓ワールドカップの話です。
ブラジル対ドイツ決勝戦のあくる日のことです。
敗れて落ち込むドイツチーム主将オリバー・カーンについて、
ドイツチームの監督がインタビューでこう語っていました。
「カーンは頑張った。彼を責めるヤツがいたら俺が許さない」
このコメントは「なぐさめ」ではありません。
これは監督からカーンへの感謝と敬意を込めた「ねぎらい」なのです。
確かに決勝では負けた。
しかしカーンは死力をつくし、やるべきことをやり抜いた。
そのことに、監督は監督として、そして何より一人の人間として、
心からの感謝と敬意を表しているのです。
そして多くの社員、チームメンバーの心にスイッチを入れる、お客さんからの「ありがとう」。
これはもちろん感謝を表しているのですが、これもまた「ねぎらい」なのです。
お客の、心からの「ありがとう」を通じて、あなたのチームメンバーは、
「あなたが存在してくれてありがとう」という感謝と敬意を受け取るのです。
「ほめる」ということと、「ねぎらう」ということは、まったく異なる次元のことなのだということです。
堀の内先生が犯罪者をねぎらうとき、たとえばこういう言葉をかけるのだそうです。
「そうか。君にはこの方法しかなかったんだね」
犯罪者に対してすら、ねぎらうことは可能なのです。
もちろん犯罪者が犯した罪を「ほめる」わけにはいきません。
しかし、「ねぎらう」ことはできるのです。
堀の内先生はこうおっしゃいます。
「ねぎらい」とは無条件の行為だ、と。
「ほめる」というのは条件付の行為。
ある条件が整ったときに、初めて「ほめる」という行為ができる。
「ほめる・しかる」というのは、そういう条件付きの行為なのです。
「ねぎらい」は、最大の「快」へつながります。
「ねぎらい」こそが、魂のごちそうへの最短パスポートなのです。
『リーダーが忘れてはならない3つの人間心理』フォレスト出版
交流分析という心理学に、ストロークという考え方がある。
そのストロークには、相手をいい気持ちにさせる肯定的なストロークと、
相手を不快な気持ちにする否定的なストロークがある。
肯定的なストロークが人には必要であることは言うまでもない。
さらに、ストロークには、無条件のストロークと、条件付きのストロークの二つがある。
無条件のストロークとは、「あなたがいてくれてとても幸せ」
という相手の存在を無条件で認めるものだ。
また、条件付きのストロークは、「勉強したら何か買ってあげる」というような、
ある条件をクリアーしたら認めるというもの。
無条件の精神的なストロークには、
「ねぎらう」の他には、「微笑む」、「拍手する」、「愛する」等があり、
肉体的なものとしては、「握手する」、「ハグする」、「ハイタッチする」などもある。
「ねぎらう」とは、ある面での共感だ。
ともに感じあうこと。
しかし、「ほめる」のは、時として上から目線だったり、条件付きになってしまうことが多い。
心にスイッチが入るには、魂のご馳走が必要。
それは、人から「ありがとう」という、ねぎらいの言葉を掛けてもらったとき。
「ねぎらい」は、人を幸せにする。 |
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