2010.7.26 |
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芸術はのろさを要求する |
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齋藤孝氏の彫刻家ロダンについての心に響く言葉より…
芸術家を目指すも、国立高等学校の試験に3回続けて不合格。
サロン(展覧会)に出品しても、入選しない。
入選しなければ、名も上がらず仕事も来ない。
《私は50歳まで、貧乏がもたらすありとあらゆる苦労を味わった》(ロダン)
24歳で最初のアトリエを手に入れるのだが、すきま風が始終吹き込むボロ家。
いてつくような寒さで、せっかく造った像も、寒さで割れてしまったという。
40を過ぎた頃から徐々にだが評判も増してきて、大きな発注も舞い込むようになる。
しかし、順調には行かない。
例えば、現在もロダンの代表作と言われる『カレー市民のモニュメント』。
先方の要求は英雄の像だったが、ロダンが造り上げたのは、苦悶(くもん)している6人。
「これはどうか?」と非難が集まり、最後はトイレの脇に置かれてしまう。
それでもロダンが折れなかったのは、アンチスピードの信念ゆえだ。
《芸術はのろさを要求する。
人々の殊(こと)に青年の頃には思いも及ばないほどの辛抱を要求します》(ロダン)
現代は、何事もスピードを要求される時代だ。
効率化が叫ばれ、短時間で生産性を上げなければ、評価されない。
だが、そのスピードに翻弄されるあまり、自分をごまかしてはいないか。
仕事の出来が悪くとも、「この程度なら合格だな」と勝手に納得して次に進む。
《困難をごまかす習慣がついて来て、投げやりな彫刻で満足するようになり、
やがて、まるで悪い彫刻になって来ます》(ロダン)
やがてこの悪習が、全体に影響を及ぼしてしまい、人は行き詰まる。
長い年月の辛抱を経なければ、ゴールには辿(たど)り着けないのだ。
『5分で「やる気」が出る賢者の言葉』小学館101新書
現代はスピード重視の世の中だ。
しかし、いくら早さが大事だと言っても、一足飛びの成功を望んだら挫折する。
一歩一歩を積み重ねや、時には回り道をすることも必要だ。
また、その夢が大きければ大きいほど、そこには辛抱も要求される。
いい加減な仕事でもいいから、
とにかく早く仕上げるというスタイルで仕事をしてきた人は、やがて行き詰る。
その仕事にたいする、思いや、完成度を追求するという、深さが、高まっていかないからだ。
質を高める努力は、時間がかかる。
何十年、何百年にわたって生き残ってきた作品や、仕事は、質の高いものだけだ。
我々は、普段の仕事の中でも、
このことだけは時間をかけてじっくりと取り組むという、何かがあっていい。
誰になんと言われようと、何年かかってもい。
質を高め、追求するという努力だ。
何かを成し遂げるには、「のろさ」という鈍(にぶ)さがあるといい。
鋭(するど)さは、一時(いっとき)の力であり、持続することは難しい。
一生涯かけて仕上げる仕事には、ある種の「のろさ」と「辛抱」が必要だ。 |
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