2010.7.12 |
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光と影が入り混じる人生 |
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邑井操(むらい みさお)氏の心に響く言葉より…
映画や小説に出てくる人気者に共通する面白さがある。
無口で一見間抜けに見えながら実は切れ者であり腕達者であるとか、
ニヒリスチックな表情をしながらいったんことがあると縦横無尽に荒れ回るとか、
柔道何段の剛の者であるのに無抵抗を唱えるとか、
ひょうきん者で頓馬(とんま)なくせに女にもてるとか、
外と中身がまるで変わっているというところに人気が集まっている。
もう一つは、変化に富む人が、人を飽きさせず、行為と興味をもたせている。
まじめ一本槍の人かと思うと、ときに驚くようなくだけた話もやる。
弱気な人間かと思うと、あっというような離れ業を見せる。
短気かと思うと、人のできないような我慢強さを示す。
派手に金を使うかと思うと、実に計算高い仕事をしている。
そんな具合に光と影が入り交じり、
絶えず色や形を変えてみせるような変化のある人間はおもしろい。
人間が物の組み合わせの妙を好むものだからだろう。
飽きのこない人とはこういう人をいうのだろう。
『責任の取り方』PHP文庫
映画やドラマなどで、日本人が好きなタイプは、水戸黄門のような人だ。
ふだんは何の力もないような好々爺が、いざ大きな事件が起きると、
「控え居ろう!この紋所(もんどろこ)が目に入らぬか」と、言うや否や、偉い人に豹変する。
普段とギャップが大きければ大きいほど、喝采され、ウケる。
要するに、最初から自慢ばかりを言う人は嫌われるのだ。
会議などでは、普段は控えめな人が、
時としてバシッと意見を言ったりするから重みもあり、みな話を聞く。
同時に、予想に反して意外なことをする人、つまり驚きのある人が人気となる。
感情の起伏もそうだ。
まるで能面のように、喜怒哀楽という感情を、露(あらわ)に出す事をしない人は魅力がない。
平坦でつまらないからだ。
人は、面白みのある人を好む。
意外性を持っていて、驚きや感動のある人。
つまり、感性の豊かな人だ。
良寛禅師の辞世の句
「うらをみせ おもてを みせて ちるもみぢ」
人の一生はまるで、裏を見せ、表を見せて散っていく紅葉のようでもある。
表だけを見せ続けることはできない。
光と影が入り混じり、たえず変化のある人はおもしろい。 |
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