2010.6.30 |
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発信機能より受信機能が大事 |
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二見道夫氏の心に響く言葉より…
できたての小粒な同業の会社社長が、
「この地域ナンバーワンのT社長にご挨拶したい」ということで、
銀行の支店長から紹介を受けた。
席は一流どころの○○亭に用意させていただく。
なにとぞご臨席をというわけで、T社長としても悪い気はしない。
「まあ、そこまで言われるなら…」と、わざと鷹揚(おうよう)さを装って出かけることにした。
先方のホヤホヤ社長は、畳に額をこすりつけんばかりにしてT社長を迎え、
さあどうぞと床の間を背にした上座へご案内。
T社長は語るのだった。
「その社長は、『私など何も知りませんで』、『ほう』、『なるほど』、『左様でございますか』、
という具合に、熱心に聞いてサッとメモ。
そして、私に尋ねる。
豚もおだてりゃ木に登ると言いますが、
調子に乗った私はペラペラと経営のノウハウをしゃべってしまったんです。
その結果、今日現在の実態はご存知のとおり、うちはガタガタ。
向こうさんは日の出の勢いですよ」
「私は発信機能だけが肥大していたんですな。
先方さんは、はいはいとバカになり切って、
先発のノウハウを優れた受信機でがっちりキャッチしていたというわけです」
誰でもそうだが、発信機能だけが肥大化すれば当然のように、受信機能、
つまり人の話を聞く能力が衰え、ついには人の話を聞くことが我慢できなくなってしまう。
話したくてうずうずするが、考えてみれば何のことはない。
自分の肚はすっかり読まれてしまうが、相手からは何も得られない。
損な話だ。
『一日一話、寝る前に「読むクスリ」』知的生き方文庫
あるとき、松下幸之助さんに、雑誌の記者が
「この問題について、どうお考えですか?」と、質問した。
すると、松下翁は、
「うん、そうやなあ。しかしあんたらもいろいろ勉強してるやろうし、
あんたはいったどう考えてるんや?」
と、逆に質問したという。
その聞き方があまりに自然で、うまいので、
尋ねられた記者はペラペラとしゃべってしまった。
結局は、取材に行って、質問をされて帰ってきてしまった。
人は、年下や、後輩に会うと、威張ったり、先輩風をふかせてしまう。
そして、つい自分の話ばかりをする。
だれでもみな、自分の話をしたくてたまらない。
人に認めてもらいたいからだ。
かくして、威張ったり、自慢したりする人は失敗し、
謙虚で、聞くのが上手な人は成功する。
おだてられ、持ち上げられ、それに乗ってしまう人には甘さと隙(すき)がある。
ペラペラとしゃべる発信機能を磨くのではなく、
人の話を聞くという受信機能を強化しなければならない。
バカになりきって、人の話を聞くことはとても大事だ。 |
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