2010.6.15 |
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いつも挑戦者の心を忘れない人 |
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コピーライターの糸井重里さんの心に響く言葉より…
手塚治虫(てづかおさむ)さんの書斎に固定カメラを据えて、
ずーっと写している番組を観たんだけど、ほんっとうに寝ないんです。
すーっと、漫画描いてる。
撮影の終わる直前に人が訪ねて「いかがでした?」と言うと、
もうずーっと寝てないからヘトヘトなはずなのに、
「やっぱり終わるとすっきりしますね。うれしいです」と、もう明るく爽やかなコメントを言う。
あれは、人間ができているとしか言いようがない。
手塚さんは、大御所になってもギャラを高くしなかったらしいんです。
割安感のあるギャランティにしておいて、
なるべくたくさんの雑誌に作品を発表するようにしてたらしいんですよ。
期待の新人が現れるたびに、
そいつと決闘するような漫画を描くようなこともあったみたい…。
とにかく必死なまでの仕事量なんですよ。
漫画原稿を、生涯で15万枚も描いたといいますから、とんでもない話でしょう?
1冊200ページだとすると、750冊分の漫画を描いたことになるわけで。
『海馬』新潮文庫
手塚治虫さんは、医学博士でありながら、
日本の漫画のレベルを限りなく高めた、天才漫画家だ。
日本の漫画の神様などとも呼ばれる大御所が、ギャラを高くしなかったという。
有名になれば、ギャラはあがり、必然的にあまり量は描かなくなる。
しかも、有望な若手と、平気で競ったという。
ちょっとでも、名が売れてきたり、もてはやされたりすると、態度が変わってくる人は多い。
有名人との付き合いも増え、いままで支えてくれた人たちをないがしろにする。
そして、守りに入る。
しかし、ほんとうに実力があり、真に仕事を楽しんでいる人は、
相手が誰であれ、ガードを固め、守りに入るようなことはしない。
どんなに大御所となろうと、ひとりの挑戦者としてのスタンスを変えないからだ。
「千日の稽古(けいこ)を鍛(たん)とし、
万日の稽古を練(れん)とす」という、宮本武蔵の言葉がある。
何事も、芸事は量稽古(りょうげいこ)から始まる。
どれだけの量の稽古や鍛錬をしたかで、上達するかどうかが決まる。
それを、天才と呼ばれる人が、さらに量をこなすのだから、
凡人との差はますます広がるばかりだ。
どんな立場になろうと、いつも挑戦者の心を忘れない人でありたい。 |
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