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2010.6.14

結果論で考えない

童門冬二(どうもん ふゆじ)氏の心に響く言葉より…

あるとき、福岡城にドロボウが入った。
宿直に当たっていた二人の侍がこれを捕らえた。
翌日、黒田長政がこの二人に多額の褒美を出した。

ところが、捕らえたドロボウがまだ十七、八の少年で、
それにいかにも弱そうな男だったので、
「あんな弱々しい少年をつかまえて、あんなに多額な褒美を出すことはないじゃないか。
名のある敵の大将の首をとったわけではないのに」と問題になった。

すると長政はこう言った。
「捕らえてみたら、十七、八の弱々しい少年だということがわかった。
しかし、捕らえる前に、もし闇の中で、互いに、盗賊が入ったぞ、
盗人だ!と叫び合ったとき、はたしておまえたちは、
その盗賊が十七、八の弱々しい少年だということがわかっただろうか?

それを、勇気をもって、たった二人で突入し、
賊を捕らえた功績は、おれは大変な手柄だと思う。
いいか?結果が出てから、ものをいうのはたやすい。
しかし、結果を考えずに飛び込んでいった二人の勇気は、
やはり死を覚悟していたと思うべきだろう。
その心根に感動して、おれは多額の褒美を与えたのだ。
どうだ、間違っているか?」

『人心掌握の天才たち』PHP文庫

黒田長政は、秀吉の側近であった黒田如水の子である。
長政は如水のあとをうけて福岡城主となり、
その巧みな人心掌握術で、黒田家は長く繁栄したという。

新しく開店した店に対し、必ずなにか批判する人がいる。
あれが問題、これが問題、と欠点や短所をあげつらう。
結局は、自分がやればもっとうまくいく、と。

しかし、それは結果論だ。
商売はうまく行くときもあれば、失敗するときもある。

自分がひとつもリスクをおかさないで、評論家のようなことを言ってはいけない。
自らが実践する立場なら、その中に、よい点を見つけることが先決だ。

出来上がったものを見れば、誰でも簡単だと思う。
批判からは何もうまれない。

何でも、自分がやってみればわかることだが、
新たな挑戦にはとてつもない勇気と、努力が必要だ。

最初にチャレンジした人は称(たた)えられなければならない。
結果論ではなく、「最初の一歩を踏み出す勇気」こそ賞賛したい。



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