2010.5.23 |
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優しさをありがとう |
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遊園地での心温まる素敵なお話から…
二度の脳梗塞(のうこうそく)で重度の障害が残った夫は、
狭心症(きょうしんしょう)の発作をくり返しながら自宅療養を続けている。
そして、人との接触を求めて、ときおり外出もする。
冬の一日、急に思い立って遊園地に行った。
広場の隅に車椅子を止め、
私は傍(かたわ)らに立って元気に走り回る子どもたちを見ていた。
思ったより寒く、早く帰らねばと思った。
そのとき、広場に歓声があがった、ドナルド・ダックが現れ、
子どもたちがどっとかけ寄ったのだ。
ところが、そのあひるさんは子どもたちをかき分けて、
どんどんかけてこちらへ近づいてくる。
広場の隅にいる私たちのほうへ…
そして、車椅子に乗った夫の前に来ると、
大きく一礼して、大きな手で夫の背中を撫(な)でてくれた。
二度、三度。
突然のできごとに、私たちも周りの人も驚いた。
夫の背中を撫でて、今度は私の腕をさすり、両手で包み込んでくれる。
大きな白い温かい手で…
優しさが老いたふたりを包み、その温かさが周りに広がって、
見ていた人たちのあいだから拍手が起こった。
夫の顔を見ると、涙がほろほろ頬(ほほ)に伝わっている。
風の冷たさを忘れた。
「優しさをありがとう」
と言うのが、精一杯の感謝の言葉。
あひるさんはウンウンとうなずいて、
もう一度夫の背中を撫でて、子どもたちのほうへかけていった。
(大分県別府市 楢崎好江 73歳)
『涙が出るほどいい話 第4集』河出文庫
病気や身近な人の死などで、本当につらいときは、
ただ手を握ってくれたり、抱きしめてくれるだけで癒される。
言葉はいらない。
むしろ心のこもっていない言葉は空々しく感じてしまう。
これを心理学ではストロークという。
その中でも、これは言葉を伴わない非言語的ストローク。
背中をさする。
涙を流す。
両手を包む。
見つめる。
微笑む。
うなづく。
手を振る。
おじぎをする。
拍手する。
誰かが素晴らしいことをしたとき、
思わず周囲の人から拍手が起こることがある。
ファインプレーだ。
「素晴らしい!」、「よくやった!」、「応援してるよ!」「がんばれ!」
という気持ちが込められている。
どんなときでも、人を元気付け、
優しい気持ちを伝えられる人でありたい。 |
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