2010.5.14 |
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世の中を夢とみるみるはかなくも |
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安岡正篤師の心に響く言葉より…
西行の歌でありましたか、「世の中を夢とみるみるはかなくも、
なほ驚かぬわが心かな」というのがあります。
驚けない!はっきりと目が醒(さ)めないという悶(もだ)えは、
国木田独歩もいたく悩んだように、
凡夫の身には誰しも免(まぬが)れがたいものであります。
世の中に何がゆえに哲学や文学や宗教や、尊い精神の世界があるか。
それは何ということなく、その日その日の生活に追われて、
心を失ってしまう、人間が人間たることを失ってしまいやすい時に、
はっきりと目を醒ます、よく驚くということが、人間の本質的な要求であるから、
この人間の一番尊い要求が、
次第にそういう信仰や学問、芸術等、尊い文化を生んだのであります。
我々も生きておる限りは、よく醒めることのできる、
よく驚ける人物にならなければならんと思うのであります。
『運命を開く』プレジデント社
西行法師は、
「世の中は、一瞬にして過ぎる儚(はかな)い夢や幻(まぼろし)のようである、
とわかってはいる。
それでもなお、夢うつつで、我がこととは思えず、目が覚(さ)めない」
と詠(うた)った。
「酔生夢死」という言葉がある。
世の中を、酒に酔ったように、夢見心地で、何をなすでもなく、
ぼんやりと一生をおくること、をいう。
そういう毎日には、ハッとするような驚きはない。
目が覚めるような気づきもない。
その日の生活に追われ、ぼんやりと毎日を送る人がほとんどだ。
そうすると、人生はあっという間(ま)に終わってしまう。
若者も、気がつけば中年になり、中年は老人となる。
よく醒め、よく驚ける人物になるためには、ジャンルを超えた勉強や、
たくさんの人との出会いが必要だ。
古典や、芸術、哲学、心理学、人物学、歴史、文学、宗教…
自分に楔(くさび)を打ち込まなければ、自分という舟はたちまち流されてしまう。
自らが主人公とならなければ、周囲のいうなりに動かされる。
流されずに、自らの人生を生きるには、自らが動くこと。
ぼんやりと毎日をすごしていては、人生はあっという間に過ぎてしまう。
目を醒まし、よく驚くことが必要だ |
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