2010.5.9 |
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子どもが生まれてきたときのこと |
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涙の元カリスマ塾講師、木下晴弘氏の心に響く言葉より…
合宿は、塾にとっても大きなイベントで、
合宿の成果によって合格率も変わってきます。
生徒達にとって、勉強漬けの日々が続く合宿は、つらく厳しいものです。
親元から離れ、一人で受験というものに向わなければなりません。
そんな苦しい環境の中、生徒のやる気を持続させることは難しいのです。
しかし、この厳しい夏の合宿を素晴らしいものに変えてしまう
スタディアシスト(久保田学園グループ)という塾が兵庫県にあります。
この塾は、合宿に参加する生徒の保護者だけを事前に集めて、
合宿説明会をしています。
「お母さん、合宿に参加する彼らは、
あまり経験のない長時間の勉強をすることが目的で親元を離れます。
そこではとても心細いし、必死になって勉強をやる中でつらくなって、
もう帰りたいと思ったり、悩んだりする子も出てくるのです。
あなたのお子さんが今まさにそういう状況にあると想像して、
彼らを励ます手紙を今ここで書いてほしいのです」
その時に、まずお子さんの名前の由来を書いてもらいます。
その名前を命名した理由を書いてもらうのです。
するとお母さんたちはこんなことを手紙につづっていきます。
「あなたが生まれた時、それは○○病院の一室でした。
あの時、お父さんは仕事を休んで見に来たよ。
あなたが生まれてお母さんは本当に幸せだったよ。
こんなにうれしいと思ったことはありません。
でも、責任重大だとも感じたよ。
その時、お父さんと何日も考えました、あなたの名前を…
そして、私たちがあなたに願ったこと、それはたった一つです。
いつまでも、元気に、明るく、
本当に幸せに人生を送ってくれたらということです……」
「…お母さんはあなたが一人で受験という関門に立ち向かうほど成長していることを、
本当にうれしく思っています。あなたが生まれてきてくれて良かった」
「お前が息子でよかった。お前と出会えてよかった。元気に帰って来いよ」
合宿も終盤に入り、体力的にも精神的にも限界がきて、
「もうダメだ」と生徒たちが音を上げようとするその時です。
あのお母さんからの手紙を、サプライズプレゼントとして生徒一人ひとりに渡すのです。
手紙を読んだ子どもたちの目からは、大粒の涙がポロポロこぼれ、彼らは号泣するのです。
先生も涙を流します。
お母さんたちのメッセージには、「がんばれ!」などという言葉はひと言もありません。
「あなたが幸せならそれでいいの」
「いつでも帰って来ていいからね」
「こんな遠い場所にあなたが行って、お母さんは胸が締めつけられるような思いです」
「ずっとお母さんの子どもでいてね」
先生は生徒に「どうだ、帰るか?」と聞くのですが、
子どもたちは泣いたあと、「先生、やります!」と言って、自らペンを握り始めます。
そんな変化をした生徒に、先生は語りかけます。
「そうか。でもその前に、この手紙を読んでどう思った?」
「感謝してます」
「それじゃ勉強する前に、今、心が熱いうちにお父さん、お母さんに返事をかきなさい」
生徒たちは、感謝の手紙を先生に渡して無事に合宿を乗り切るのです。
その生徒たちの手紙には…
「生んでくれてありがとう」
「育ててくれてありがとう」
「ほめてくれてありがとう」
「叱ってくれてありがとう」
「学校に行かせてくれてありがとう」
「一緒にいてくれてありがとう」
「お父さんとお母さんの子どもでよかった」
「ほんとうにありがとう」
子どもたちの手紙は「ありがとう」の言葉であふれているのです。
何度も何度も「ありがとう」が出てくるのです。
『涙の数だけ大きくなれる!』フォレスト出版
子どもが生まれてきたときのことは、親ならみな覚えている。
特に、母親の記憶は鮮明だ。
どんなにうれしく、ほっとしたことか。
そして、名前をつける。
その何字かの名前に思いを込めて。
何日も何日も、ああでもないこうでもないと考える。
こんなふうに育って欲しい。
こんな気持の子どもであってくれたら、と。
生まれたときは、健康で、明るく育ってくれるだけでいい、
と思ってきたのに、大きくなるにつれ欲がでる。
もっと、勉強ができれば、もう少し我慢があったら、ぐずぐずしないでさっさと動いてくれたら…
でも、生まれた時は、ただただ、健康で無事に育ってくれればいい、と願ったはず。
明るくて笑顔があるだけでいい、と思ったはず。
もう一度、子どもが生まれた時のことを思い出してみたい。
あれこれ要求するのをやめて、
子どもに「あなたが生まれてきてくれてどんなにか幸せか」と伝えたとき、
子どもも、親に、「ありがとう」と感謝の気持が芽生えるのかもしれない。 |
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