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2010.5.4

待つことのできる人

巨万の富を築いた本多静六(せいろく)翁の、心に響く言葉より…


西洋のことわざに、「待つことのできる人に、
時は一切の宝物を持ってくる」とあるように、
もうとても堪(た)えきれない、むしろ死んだ方がましだ、死にたいと思うような、
非常な苦しいことでも、しばらくじっとしていると、あたりが見えるようになり、
自分の進むべき道がわかって、どんどん目的地に進むことができるように、
どんな暗黒の中にも、苦難の中にも、
必ず進むべき光明(こうみょう)の道が横(よこ)たわっておる。

かくして、大なる成功は、
大なる苦難を通じて初めて得られるものであることを知るならば、
いかなる難事にも忍耐のできるはずである。

『本多静六一日一話』PHPハンドブック



本多静六翁は、苦学して山林学を修め、
東大教授のかたわら、独特の生活哲学「4分の1天引き貯金法」と、
山林、土地、株の売買で巨万の富を築きあげた。

だが、生活は質素で、大学定年後は、
思うとろがあり余分の財産すべてを公共事業などに寄付してしまった。


現代は、何でも性急にことを決めたがる。
特に、インターネットの発達により、その速度はどんどん増している感がある。
通常のビジネスでは、いいかもしれないが、
こと人生の一大事となると、
その拙速(せっそく)さがかえって問題の解決をこじらせることがある。

自らが動けば解決するものもあるが、動かない方が解決が早いこともある。
病気になって、あせって早く治そうと、
色々な病院を渡り歩き、様々な検査をし、
薬を山盛りに飲んで、かえって体を壊す人もいる。

現代人は、足すことはするが、引くことや捨てることはあまりしない。
いいと思うことをどんどん足して、
あれもこれもやれば、根本の原因が見えにくくなる。

待つことは、捨てることでもある。
「あせる気持」、「効率よくという考え」、「明日どうなるだろうという不安」…


夏炉冬扇(かろとうせん)のごとく、
夏の暑いときには、炉(ろ)にあたり、冬の寒い時に扇子(せんす)を使う。
暑い時には暑さに浸りきり、寒い時には寒さと一体になる。

病気になったら、病気に浸りきる。
不況の時は、不況に浸りきる。

ジタバタしても何も変わらない。
時には、待つことも大事だ。



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