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2010.5.3

「自分は自分」と開き直れる強さ

精神科医で小説家の加賀乙彦(かがおとひこ)氏の心に響く言葉より…

日本と欧米では心の病の現れ方がずいぶん違う。
これは私自身が、自分の臨床経験をとおして感じたことでもあります。
精神科医となって三年が過ぎた頃、犯罪学と、精神医学を学ぶため、
フランス最北部、フランドル地方の県立精神病院へ医師として赴任しました。

フランスの病院で患者さんの話に耳を傾けるうち、
日本とは逆の悩みが多いことに驚かされました。

たとえば、統合失調というのは文化や言語を問わず、
どの国でもおよそ百人に一人くらいの割合で発症する精神疾患です。

同じ統合失調の妄想でも、フランスで目立っていたのは
「他人と顔や心が同じになってしまった」という訴えでした。
「みんな(あるいは誰か)と同じだと思われている」
「自分の独自性がなくなってしまう」と悩むのです。

一方、日本の患者さんの場合は、「私はみんなと違ってしまった。
だから嫌われ、悪口を言われる。仲間はずれにされている」と、切々と訴える。

さまざまな民族や文化がせめぎあいながら
国家というものを形成してきたヨーロッパは、
個人主義や近代的自我といった言葉が生まれる以前から、
大勢の人間のなかで埋没してしまわないため、生き残っていくために、
自分を主張することがもとめられてきたのでしょう。

古来、個人より集団を重んじてきた日本社会では、
欧米人以上に他者というものを気にせざるを得ませんでした。
だから、どうしても「場」の空気を読んで自分を抑えてしまう傾向が強く、
「個」というものが育ちにくい。

だから欧米は優れていて日本は劣っていると言っているわけではありません。
ただ、心の健康や幸福という観点から見ると、
常に他者の目を気にしながら生きるより、
「自分は自分」とどこかで開き直れる強さをもっていたほうがいいのは確かでしょう。

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日本とフランスでは、ことほどさように考え方や受け取り方が違う。
日本人としては、「他人と違うこと」を恐れる神経は理解できるが、
「みんなと同じになってしまった」と悩む気持ちは分かりにくい。

日本でも、「他人と違うことをしよう」、
「個性を発揮しよう」、と言っているにもかかわらず、だ。

周囲と協調し、集団を重んじ、「場」の空気を読むのは決して悪い価値観ではない。
ただ、それが行き過ぎると、ちょっと意見を言われたくらいで、
「まわりが自分の悪口を言っている」「自分を落としいれようとしている」等、
被害者的になってしまうことがある。

他人の意見が、批判に聞こえ、全否定と思ってしまう。

周囲には、ときとして、「大声で攻撃する人」、「自分のことばかりを主張する人」、
「強い口調でいい募(つの)る我の強い人」が、現れる。
そんなときは、協調と集団の和を重視している人は、やりきれな気持が続く。
そして、それが積み重なると、心や精神が耐え切れなくなってしまうことがある。

個が確立されている人は、意見の対立や、大激論があっても大丈夫だ。
意見は意見、人格まで否定されているわけではない、と思えるからだ。
特に、フランス人はそうだという。

しかし、個の確立も、行き過ぎると精神疾患となってしまう。
難しいものだ。

どんなに和と協調の精神があろうが、
罵詈雑言(ばりぞうごん)にじっと耐え、自分を壊してしまっては何にもならない。

時には、「人は人、自分は自分」と開きなれるくらいの強さも必要だ。



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