2010.5.2 |
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| 言葉のプラシーボ |
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アメリカの有名なジャーナリストのノーマン・カズンズ氏の心に響く言葉より…
プラシーボは精神と肉体とが本当は別々のものではないという証拠である。
プラシーボはどんな条件の下でも効験があるというものではない。
その使用の成功するチャンスは、
まったく患者と医師との間の関係の質いかんによってきまると信じられている。
プラシーボという言葉の起源はラテン語の動詞の「私は喜ぶだろう」だ。
■あるパーキンソン病患者は薬だと言ってプラシーボを与えられたが、
この結果ふるえが著しく減った。
そのプラシーボ効果が薄れてきた時、
今度は同じ物質をこっそり牛乳に入れて飲ませたが、
ふるえは再発したという
■ある患者の集団に抗ヒスタミンの代わりにプラシーボを与えたところ、
その七十七．四パーセントは抗ヒスタミン剤の特徴である眠気を訴えた。
■ある軽度うつ病の大規模な研究調査の際、それまで複雑な刺激剤を与えていた患者たちに、
その薬を中止してプラシーボを与えて見たところ、
今までの薬で示したとまったく同じ回復の徴候を示した。
その調査と関連した別の調査で、
まだ薬を与えられたことのない百三十三人のうつ病患者にプラシーボを与えて見たところ、
その4分の一は非常に良好な反応を示したので、
その後の本物の薬による実験からは除外されたほどであった。
■八十八人の関節炎患者がアスピリンやコルチゾンの代わりにプラシーボを与えられたが、
プラシーボが効いた患者の数は、普通の関節炎の薬の効いた数とほほ同じであった。
プラシーボの丸薬を飲んでもまったく症状が軽くならなかった患者の一部に
プラシーボの注射を行ったところ、そのうち六十四パーセントは症状の軽減と回復とを報告した。
八十八人の患者全体でみると、プラシーボの効験は単に痛みの軽減だけでなく、
食欲や、睡眠の増進、排泄の促進を含み、さらに腫脹（しゅちょう）の減退さえ見られた。
何年か前、アフリカのシュヴァイツァー病院の晩餐の席で、
私は何気なしに、現地の住民たちはシュヴァイツァー病院があるお陰で、
呪術医（じゅじゅつい）の超自然信仰に頼らずとも済む、幸運なことだと口走った。
するとその翌日、
シュヴァイツァー博士はわたしを近所のジャングルの中の空き地へ連れて行って、
「私の同業者の一人」と言って、年老いた呪術医を私に紹介した。
「私の常得意の中には呪術医がよこしてくれた人たちがいるんでね。
だから私は呪術医の悪口は決して言わないことにしている」と言った。
そして、さらにこう言った。
「アフリカの呪術医が治療に成功するのは、
同業のわたしたちすべてが成功するのと同じ理由によるのですよ。
どの患者も自分の中に自分自身の医者を持っている。
患者たちはその真実を知らずに私たちのところにやって来る。
わたしたちがその各人の中に住んでいる医者を首尾よく働かせることができたら、
めでたし、めでたしなんです」
『笑いと治癒力』岩波現代文庫
ノーマン・カズンズは不治に近い難病を文字どおり「笑い」によって克服した。
人間の自然治癒力の可能性を取材し、笑いとユーモア、
生への意欲が奇蹟をおこすことを実証した。
その不思議な自然治癒力の中に、プラシーボがある。
プラシーボは偽薬（ぎやく）のことだが、治療薬と外見は同じになっているが、
薬の薬効成分は全く入っていない。
あのノーベル平和賞を受けたシュヴァイツァー博士も、
アフリカの呪術医の悪口を言わなかったという。
すなわち、プラシーボ効果を信じていたのだ。
名医や名科学者であればあるほど、自分の技術や知識に留まらず、
神のごとき大きな存在や、精神的なものを信じる人が多い。
名医に処方されたプラシーボは、薬と同等或いはそれ以上の効果がある場合がある。
逆に、非常に効き目がある薬でも、知らずに飲まされたときには、効果がない。
有名なソムリエが、「これは美味しいワインだ」と言うので、美味しいと感じるようなものだ。
目隠しテストをしたら、高級ワインを当てられる人は少ない。
ことほどさように、我々は確信的な言葉や、権威者の言葉に左右される。
薬でさえ、言葉ひとつで効果がある。
ならば、我々は毎日、肯定的な言葉を使い、確信的に言い切ることが必要だ。
「幸せ」といえば幸せがくるし、「感謝」すれば、感謝するようなよいことがくる。
ラテン語のプラシーボは、「自分が喜ぶ」ことをすること。
我々は…
もっと、心と体が喜ぶ、「よい言葉」というプラシーボをとりたい。 |
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