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2010.3.12

魅力ある大人

精神科医の斉藤茂太先生の、心に響く言葉より…

生まれたばかりの赤ん坊は、きわめつきのエゴイストである。

お腹がすけば泣く、おむつがぬれれば泣く。
誰かがやってくれるのが当然と思って泣いている。

自分にお乳を与えてくれる母親にはなつくが、
ほかの人間には人見知りをする。
自分の思い通りにならないと、たちまちご機嫌が悪くなる。

大人になってもこのままだったら、
争いやケンカが絶えず、人間関係のストレスが増大し、
精神科医が多忙になるだろう。

しかしまた、人間の本質、「生きよう」という根源の欲望は、
赤ん坊のこの姿である。
私たちがピンチにおちいったとき、
そこから脱出するエネルギーは、このエゴイズムだ。

「もっといい生活をしたい」
「あいつに勝って、見返してやりたい」
この気持ちがバネになって、苦しみをはね返していく。

エゴイズムをむき出しにしてはいけない
と思い込んでいる人も多いだろうが、しかし、
エゴイズムを抑えすぎると、たくましさ、パワーのない、
メソメソした人間になってしまう。

たくましく生きるエゴイズムを根本に持ちながら、
それを「知恵」というオブラートに包み込んで、
上手にコントロールする。

自分の欲望を実現させ、前進しながら、
他人への配慮も忘れず、他人の都合も大切に考える。

こうして、愛情や友情に彩られた豊かな人生を創造していける人が、
「魅力ある大人」といえるのではないか。

エゴイズムをひた隠しに抑え、自分を殺して生きている人は、
決して感じよくはない。

その反対に、エゴイズムむき出しの人も感じが悪い。
要はバランスの問題である。

『なぜか「感じのいい人」ちょっとしたルール』知的生き方文庫

人のパワーの源(みなもと)は、赤ん坊や子供のような、喜怒哀楽。

泣いたり、怒ったり、悲しんだり、楽しんだり、
という感情を自在に出すことができるのがパワーの源泉となる。

何かことあったときに一番必要となるのが、この感情のほとばしり。

「サビシイ」
「コンチクショー」
「くやしい」
「負けるか」
「うわー、たのしい」
「やったー」

しかし、この喜怒哀楽もタイミングや、場所、
相手を選ばないと、ただの我がままだったり、
鼻持ちならないイヤなヤツとなってしまう。

行き過ぎるのもマズイが、反対に自分を抑え、
感情の起伏がまったくないのは、まるでロボットのようだ。

感情の起伏が大きければ大きいほど、
人間の魅力も大きいといわれる。
振幅の巾の大きさが、魅力の巾だからだ。

エゴイズムという言葉の響きは悪いが、
これはある意味、根源的な生きるための欲望だ。

真の大人は、このエゴイズムや、喜怒哀楽を自然に出す事ができ、
しかもまわりを不快にさせない術(すべ)を持っている。

ある時は、子供であり、赤ちゃんのようにもなる。
しかし、しかるべきときは、紳士淑女である、
というように、自分を自在にコントロールできる。

本当の大人は、
自分で自分をコントロールしているという意識さえもなく、
それを自然に行っている。

バランス感覚のある、「魅力ある大人」でありたい。



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