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2010.2.26

江戸の常識と現代の常識

「男子厨房に入らず」は武家のしきたりで、
江戸時代の庶民は完全な女性上位文化。

江戸時代の男女の人口比は、初期は男七人に女一人、
中期は男三人に女一人、江戸後期になってようやく
七分三分から六分四分という具合だったから、
男はつねに大変な結婚難。

嫁に来てくれる女性をゲットできるだけで御の字だった。
それほど大事な嫁だから、
まさに下にもおかぬあつかいを受けたもの。

「亭主より先に起きるなんざ、女の恥だ」
落語「猫久(ねこきゅう)」には、
こんなセリフが登場するほどだ。
江戸では、いい亭主の条件は、
一にご飯をじょうずに炊けること。
二に、あんまがうまいこととされていたぐらいだった。

そんな男性社会に暮らしていたからか、
江戸の女はめっぽう「生き」がよく、おきゃんだった。
男たちも、なよやかな女よりも、おきゃんな女をより好んだ。
おきゃんとは任侠(にんきょう)の「侠」からきた言葉で、
威勢がよく、行動的なことをいう。

『日本人なら身につけたい江戸の「粋」』植月真澄・河出書房新社

今の常識と、昔の常識とは違うことはよくある。

例えば、婚活(コンカツ)…
江戸時代の初期は、男性の八割が生涯独身だったという。
当時は、今の婚活どころの話ではなかっただろう。
女性の数が圧倒的に少ないのだから。

例えば、女性上位…
数が少ない大切な女性と結婚したのだから、
男性のほうがまめまめしく家庭の仕事をしたという。
現代より、よっぽど女性上位だった。
亭主が先におき、奥さんはご飯の支度ができてからゆっくり起きる。
フェミニストの最たるものだ。

例えば、男子厨房に入らず…
最近でこそ、一般の男性が家庭で料理をつくることは多くなったが、
昔は、料理をつくる人は、プロの調理師は別にして、
女性の仕事だと思われていた。
それが、江戸ではとっくに男性が家で料理を作っていたとは。

例えば、颯爽(さっそう)とした、おきゃんな女性…
生き生きと働く女性、キビキビと動くしっかりした女性は
時代が進んできたから出現したのかと思いきや、
江戸時代の方がよっぽど進んでいた。

江戸という自由で闊達(かったつ)な時代があった。
江戸を知ることにより、我々はもっと発想が豊かになる。

今の常識にとらわれず、
もっとしなやかで、威勢よく、行動的でありたい。



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