2010.1.14 |
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| 短所の数うべきあらば |
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西郷南洲が傾倒した幕末の儒者、
春日潜庵（かすがせんあん）は
「今世、短所の数（かぞ）うべきあらば、
すなわち是（こ）れ第一等の人」
と言った。
今、世に時めいている人々は皆、
難（なん）のうちどころがない。
頭もよいし、才もある。
交際も上手で当たりさわりもない。
たいして酒も呑（の）まぬし、女も漁（あさ）らぬ。
まことに整っているが、
さっぱり旨味がない。
感激がない。
可もなし、不可もなしという類である。
それより、何より欲しい男は、
もっと手ごたえのある男で、
こういう人物には凡人のもちえない短所もあるが、
それがまた、えもいわれぬ魅力でもある。
『十八史略の人物学』伊藤肇・プレジデント社
この短所の数うべき人物の筆頭は、
さしずめ、漢の創始者、
劉邦（りゅうほう）ではないだろうか。
劉邦は、若い頃は典型的な遊び人で、
酒と女にあけくれた。
しかし、劉邦が居酒屋に入ると、
自然と人が集まり、店は満席になったという。
不思議な魅力があり、ある種の「可愛げ」があった。
劉邦は、自らの力のなさを知り、
策略や戦い、政治においては
到底、部下にはかなわないと、
そのすべてを任せた。
その才を、
「兵の将ではなく、将の将たる器」と称された。
すなわち、
何万人の兵隊の長である将軍ではなく、
その将軍を統率する人物だ。
対する項羽（こうう）は、
中国史上最強の武将ともいわれ、体も大きく、
力も人一倍強い、いわば武将のエリートであった。
項羽は、勇猛果敢であり、武の才もあるため、
何事も人に任せきることができなかった。
何でもよくでき、
そつなくこなす優等生は、あまり魅力がない。
何をしでかすか分からない、
ハラハラさせる人物の方が面白みがある。
欠点もあるが、長所という魅力もある。
そんな人物は人から愛される。
「可愛げ」があるからだ。
短所はいくつあってもいい。
それを上回る、魅力があれば
人は集まってくるのだから。
短所も魅力、と言われるような
手ごたえのある、生き方をしてみたい。 |
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