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2009.12.27

それでも、運命は変えられる

生涯現役の魂のロッカーYAZAWAの心に響く言葉より…

【それでも、運命は変えられる】

人生最大と言っていい危機が矢沢を襲った。
98年の正月だった。
「よくぞこれだけ俺の周りでポンコラポンコラ起きるな
ってありましたもの。
極め付きはオーストラリアでパコーンとやられましたよね」
ゴールドコーストを舞台にした詐欺事件である。
「(被害額)35億円だから。ギブアップですよね。
普通もう立ち上がれないじゃないですか」

しかも、友人と側近の裏切りである。
「髪の毛抜けながら、過呼吸の手前ぐらいまで、
精神的にそりゃ、なるじゃないですか。
はめたヤツが許せない」

身がよじれるような憤り。
苦い酒。

「自分に対しても悔しかったし」
深い自責。

世間の好奇の目が肌に突き刺さるようで、
妻と子供3人を連れ、米国に移住した。
自壊寸前の矢沢の心に、妻のひと言がしみた。

あなた知ってる?
人を恨まば穴2つって。

「人を恨んでばかりいても、解決しないってことよ。
自分も二つ目の穴に落ちるよ。
陥れた連中は忘れて、借金は背負って、
返してということを彼女は言いたかったんじゃないの」

苦言にも耳を傾けた
あなたは裸の王様そのものよ。
なぜ広島のことでくだ巻くの。
過去がどうとか言うのはもう十分じゃない。
それをハングリー精神にして、ここまで来たんだし。
全部許してあげて。
それが、自分のためだから。

人を許す?
俺のため?
20年後、歯がみしながら同じ自問自答を繰り返すことになった。
怒りのエネルギーは身を焦がすだけだ。

矢沢は6.7年で借金を完済した。
1人で35億円を、である。

「あの事件のおかげで今の自分があると思います。
本当は金が欲しかったわけじゃないってことも分かったのよ。
幸せとは何ぞや。
謎が解けたんですよ。
俺には音楽がある。
俺にはコレがあると思えることが(すなわち)幸せなんですよ」

『日本経済新聞(2009年12月26日)』より抜粋して転載

生涯現役ロッカーを宣言した矢沢永吉は今年、60歳をこえた。

広島市に生まれ、幼い頃、両親は離婚。
父親も兄も原爆症で亡くなる。
親戚をたらい回しされ、その後祖母と一緒にくらすようになる。
極貧の少年時代を過ごし、数々の屈辱を受ける。
少年時代は、どうしようもないワルだった、という。
それらの経験が、「ビックになる」「成り上がる」という想いとなった。

ラジオから流れるビートルズを聴き、
ロックに目覚めた矢沢は夜行列車で東京を目指す。

離婚も経験した。

どんなスーパースターでも、駆け出しの売れない時代がある。
そして、長い人生には、色々なトラブルが起きる。

うまくいかないのが人生だとはいえ、
矢沢のトラブルは半端ではない。

その過去を忘れ、裏切った人を許すのは、もっと難しい。

凄まじい葛藤の果てに、
今を一所懸命に生きるしかないと悟り、
自分は「何のために生きるか」が分かった。

それは、「金でもない、歌しかない」、と。
YAZAWAはやっぱり、永遠の魂のロッカーだ。



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