2009.12.20 |
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晴れた日の友 |
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城山三郎氏の珠玉の言葉から…
【晴れた日の友】
銀座を歩いていて、「シロヤマ!」と大声でよびとめられた。
呼んだのは誰かと思うと、中学同期のB君であった。
B君は、建築事務所につとめている。
そこから電話をしてくるとき、とくにそういう呼び方をする。
要するに、城山を呼び捨てにする関係にあるということを見せたいのであろう。
持ち上げられるのは、もっと困るが、
こんな風に不当に親しくふるまわれるのも、考えてしまう。
変わらぬ友がいちばんいい。
B君は中学で同期であったが、クラスもちがい、ほとんどつき合いはなかった。
彼が親しくしてきたのは、わたしが作家としてデビューした後である。
つまり、「晴れた日の友」である。
B君だけのことではない。
政界の実力者を囲む会なども同じで、その人が総理確実となると、
会のメンバーが一気にふくれ上がる、という。
「井戸を掘っているときは助けにもきてくれなかったくせに、
水が出たとなると、わっと寄ってくる」
それが多くの人情なのであろう。
『打たれ強く生きる』(城山三郎)日本経済新聞社
晴れた日の友もあれば
雲った日の友
雨の日の友
嵐のときの友もある。
ある芸能人が、売れなかったとき、明日の米も買えない生活を
支えてくれた女性と一緒になった。
しかし、あるとき突然、嘘のように売れるようになり、
テレビに出ずっぱりの超売れっ子となる。
そのうち、家に帰らなくなり、
今までずっと助けてくれた奥さんを捨て、
若いきれいな女性と一緒になってしまった。
こんな話は、枚挙(まいきょ)に暇(いとま)がない。
金融機関は、
「晴れた日に傘を貸し、雨の日には傘を取り上げる」
とよく揶揄される。
人間の深層心理はまさに、そうなのかもしれない。
しかし、人として最も大事なことは、相手が…
困ったとき
窮地に陥ったとき
失敗したとき
落ちぶれたとき
倒産したとき
そんなとき、どんな応対をするかだ。
曇ったとき、雨のとき、嵐のときに、
逃げないで、話を聞いてくれ、
一緒に泣いてくれる友は貴重だ
晴れた日の友は寂しい |
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