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2009.12.10

私心がないこと

城山三郎氏の勇気が出る言葉より…

経営が完全にいきづまり、倒産を明日に控えた会社へ送り込まれた。
立て直しを命じられたが、赤字の海である。
手のつけようのないところだが、W電気に入った山下俊彦さんは、
四つのことを心がけた。
「第一は、経営がどうなっているかを、正確に全従業員に知らせる」
「第二は、ポストと関係なく、本当に力を持っている人を社内で見つける」
「第三に、思い切った人事をする」
当然はげしい抵抗があり、反撥もあるであろう
これに耐えるためには、
「第四に、そこに骨を埋める覚悟をすること」
である。

第四というより、むしろ、第一の心得というべきかも知れない。

山下さんは、みごとW電気を立て直し、大松下の社長となった。
社長に抜擢された理由はいろいろあるが
結局は「私心がないこと」であった。

才能があり、実績もあり、人当たりもいいのに
部下に人気のない人がある。
「あの人を担ぐ気にならない」と

訊いてみると、その人は「おれが…」というタイプなのだ。
口に出さなくとも、つい態度に出る。
わるい人ではないのだが、部下としては「勝手にしろ」
といいたくなるらしい。

「裸で生まれてきたに、なに不足」と、毎日
念仏のように唱えてみても、だめなのだろうか。

『打たれ強く生きる』日本経済新聞社

天工(てんこう)を助くる者は、我従(したご)うて之(これ)を賞し、
天物をそこなう者は、我従うて之を罰す。
人君は私を容(い)るるに非(あら)ず
『言志録』

自然のわざ、たとえば、平和を守り助けるために努力する人は賞し、
それをさまたげるものは罰す。この賞罰を司る人君は、
これに私心をさしはさんではならない

昔から明君は、命令、刑罰、恩賞の三つの手段を用い
六つの敵を警戒して国を治め、天下を正した

六つの敵とは、親族、高官、財産、女色、追従、道楽である。
三つの手段は、命令によって臣を用い、刑罰によって民衆を威圧し、
恩賞によって人民を奮起させること

六つの敵に負けるということは、相手が親族や高官であると、
命令にそむいても咎(とが)めない

相手が金持ち寵姫であれば、禁令を犯しても処罰しない
相手が追従者、へつらい人間や道楽仲間であると、功績がなくとも恩賞を与える

この六つの敵に負けている者は徳を失い、威厳を失い、信用を失い、
ついには自分をも失うことになる
『言志四録』を読む(伊原隆一)プレジデント社より

100年に一度の厳しい時代というが、世界の歴史の中からみたら
今ほど、平穏な時代はない

戦争にあけくれ、明日をも知れぬ命の時代が長く続いた
しかし、現代では、いかに厳しいといっても
ビジネスで命まで取られるわけではない

私心を去ることが、天下を治め、経営を立て直す

私心のない人は、人を動かし、人に担がれる
私心のない人は、公平で、徳を積み重ねる
私心のない人は、信用され、信頼される

この嵐の時代を乗り切るには…
私心をなくし、俺が、俺がの我(が)を捨てて生きるしかない



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