2009.11.12 |
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無上意(むじょうい) |
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(株)タニサケの会長松岡浩さんの講演を聞いた
タニサケは36人の社員の中小企業だが
経常利益率30%を誇る超優良企業だ
会長の松岡さんは、誰よりも早く出社してトイレの掃除をする苦労人
講演の最後に「無上意(むじょうい)」という話が出た
「無上意」とは「これ以上無い行為」
という意味の仏典から来ている言葉だ
《5本の爪楊枝》
病院にお見舞いに行くため
あるスーパーでイチゴを買った
しかし、病院で皆ですぐに食べたいので
「イチゴを洗ってもらえないだろうか?」
と恐る恐る頼んだという
係りの女性は、快くそれを引き受け
イチゴのヘタをとり、丁寧に袋に入れてくれた
病院で皆で食べようと袋を開けたところ
袋の中には、頼んだわけでもないのに
人数分の爪楊枝(つまようじ)が入っていた
イチゴを洗ってくれるスーパーも無いと思うが
何気ない会話の中から
食べる人は全部で5人だと知った係りの女性が
気を利かせて爪楊枝を入れたのだ
たった、5本の爪楊枝とイチゴを洗う、ということだけで
このスーパーは有名になった
《二つのグラス》
四国八十八箇所の巡礼を終え
一人で高知空港の日本料理店「司」に入った年配の客は
ビール一本と、土佐名物カマスの姿寿司を一人前注文した
と同時に、「申し訳ないが、グラスは二つで」と頼んだ
若いウエートレスは怪訝に思ったが
それでも「かしこまりました」
とお客の指示に従い
ビールとグラス二つを出した
すると客は
小さな額縁に入った女性の写真を自分の目の前に置き
写真の前のグラスにビールを注いだ
そして、自分のグラスと、静かに乾杯をした
たぶん、亡くなった奥様の写真を持って
巡礼をしてきたのだろうと察したウエートレスは
寿司ができあがって運んだ時に
お箸と小皿を二組、さりげなくテーブルに置いた
その後、ふるさとへ帰ったお客からの
店への手紙には次のように書かれていたという
「四国巡礼の旅には、家内の写真と一緒に出かけ
どこでも、食事のたびに一緒にビールを飲みました
しかし、お箸と小皿を二人分出していただいたのは
お宅の店の若いウェートレスさんだけでした
こんなことは初めてでした
しかも、巡礼の最後に入ったお店で…
ほんとうに驚き、感動で体が震えました
帰りの飛行機の中では、どうしても涙が止まりませんでした
本当に有難うございました
どうぞ、あの若いウエートレスさんによろしくお伝え下さい」…と
『松岡さんの講演』より
無上意のサービス…
人は大それた行為や
金のかかった大きな仕掛けに
感動し、感激するのではない
ほんの小さな心遣い
さりげない思いやり
温かな無償の行為に感動する
人の不思議なところは
難しい数学や物理の公式を覚えている人を見ても
びっくりはするが、感動はしない
誰もが、少し努力すればできる
笑顔や、思いやりや、気遣いを
「ここまでやるか」と見せられたとき
感動し、感激する
気配りや気遣いには特殊な能力もいらないし
学校の成績も必要ない
利害、損得を考えず、「人の喜びのために」
と、ただひたすら動く人と出会ったとき、涙する
「人を感動させてやろう」、「涙を流させてやろう」
と、思ったとき、そこには偽りの、クサさが出てくる
クサイ演技やクサイ芝居になってしまう
無上意とは、人からにじみ出る
本当の、優しさや、温かみという人間味
毎日のちょっとした
温かな無償の行為の積み重ねが、人の魂を磨く
そして、それが無上意につながる
毎日が修行だ |
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