2009.9.25 |
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1000年前の想像力 |
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落語を楽しむには想像力が必要だ
テレビや映画と違って、与えられるビジュアルな情報が少ない
噺家はちょっとした仕草で、相手にそう思わせる
手に持つ扇子が箸になったり、木戸をたたく音だったり、お酒を飲む杯になったりする
つまりその気にさせるのだ
演者の力量と、聞く側の想像力のなせる技だ
落語は、その想像力が必要だからこそ面白いのだが
今では、あまり考えなくても笑えるテレビのお笑いに押されている
以前、大津の石山寺を訪ねたことがある
1000年も前のこと
上(かみ)より新作の物語を所望された紫式部が
石山寺に籠り、ある夜ひらめいた
それがあの有名な源氏物語
世界で最初の長編小説だ
石山寺に着いた時は夕方になっていた
紫式部が籠った部屋というのは
いかにも小さく暗かった
その日も、あたりは真っ暗闇
あたかも大停電の夜のごとく
電気や灯りのない当時はもっと暗かったろう
鼻をつままれてもわからないくらいの
真の暗闇を現代人はあまり経験していない
都からは離れていて
当時はもっと何もなかっただろう琵琶湖周辺
その中で、よくぞあの豪華絢爛たる
源氏物語を着想し、書き上げたものだ
と、考えただけで
涙の出るような感動を覚えたことがある
あまりに情報が多すぎる現代
想像力の枯渇する今の人たちに、紫式部は何というだろうか
想像力を呼び起こすには
一度、入る情報を全てシャットアウトし
今もっているものを出し切る作業が必要だ
情報が多ければ多いほど人は考える
考えれば考えるほど迷い
集中できなくなり、感性が鈍る
そして想像力がなくなる
1000年前の想像力と発想力があったら
現代人はもっと豊かになれ、楽しむことができる
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